この記事は主に下記2つの本をまとめたものです。
非常にためになる面白い本なので読んでみることをお薦めします。
「アート思考」秋元雄史 Amazonで見る
「ハウ・トゥ・アート・シンキング」若宮和男 Amazonで見る
AIの発展で時代が大きく変わろうとしていた矢先に、新型コロナウィルスという自然の驚異が加わり、さらに混沌化しようとしている時代。今、私たちはなにを考えるべきなのでしょう?
その答えが「アート思考(アート・シンキング)」にある気がします。
アート思考とは
「アート思考」「アート・シンキング」という言葉は、数年前からよく耳にするようになりました。
それまでは「論理的思考(ロジカル・シンキング)」や「デザイン思考」の大切さが叫ばれ、本もたくさんできていました。
論理的思考(ロジカル・シンキング)とは、課題を整理・分析し、その解決方法を論理的に探っていく思考方法です。
コンサルティング会社として有名なマッキンゼーが2000年頃から流行らせた言葉だと言われています。
論理的思考は課題をいかに効率よく解決するか、に力点が置かれていますが、それを顧客・ユーザーにとっての最適な解決方法を探るという、顧客・ユーザー寄りな発想にしたのが「デザイン思考」です。
ここでのデザインとは、見た目が格好いいとかではなく、「設計」という意味でのデザインです。
たとえばドアの片側だけ引き手がついていたら、そちらが「引く」であり、反対側が「押す」だと誰でも分かりますよね。
このように説明しなくても誰でも分かるようにするのが「デザイン思考」です。
論理的思考もデザイン思考も、「他者の課題」を解決するための思考方法です。
ですから、前提として顧客などの「他者の課題」という対象が分かっていることが必要です。
ドアを開ける効率的な方法はないか、誰が見ても分かりやすくて使いやすい開け方はないか、そういう対象に関する課題を解決するための思考方法が、論理的思考・デザイン思考です。
これに対して「アート思考」は、全く発想法が異なります。
アート思考とは、なにが問題なのかという問いから始める思考方法です。
そこに「他者」はいません。問うのは「自分」なのです。
論理的思考・デザイン思考は、「他者の課題」を解決するためのですから、突き詰めれば誰が考えても答えは同じになるはずです。
でもアート思考は、自分だけの「ちがい」を大切にします。
自分が発する問いから始めて何かを成し遂げようとするからです。
自分だけの問いに対する解答ですから、他者と同じになるはずがありません。
このため、アート思考は、他者との「ちがいを生む」思考方法ともいえます(「ハウ・トゥ・アート・シンキング」)。
デザインは答え、アートは問いなのです。
現代はVUCAの時代
AIなどによる第4次産業革命やインダストリー5.0では、発展が急速とはいえ、目の前に枝分かれしている道は想像することができました。

(出典:経済産業省 https://www.meti.go.jp/main/infographic/pdf/vision.pdf)
ですからそこにある課題も設定することができ、それを解決するための論理的思考やデザイン思考はますます重要になってくるものと思われました。
ところがその「課題」そのものが、新型コロナによって根底から覆されようとしています。
少し前までは世界は都市化が進み人の集積(クラスター)がさらに増すと予測されていましたが(「LIFE SHIFT」リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット)、これもどうなるのか、もう分かりません。
むしろ人との接触を嫌い、リモートワークによるノマド化が進むかもしれません。
現代を象徴する言葉として、「ハウ・トゥ・アート・シンキング」ではVUCA(ブーカ)が紹介されています。
VUCAとは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)のことです。
まさにこの不安定さ、不確実性が今回の新型コロナ問題で露見したことになります。
こういう時代では、「他者の課題」を解決する方法ではなく、なにが課題なのかを問い続ける能力のほうが重要になってきます。
ここから、時代はアート思考へ、となります。
アート思考はコロナにより流行り始めたわけではありませんが、まさにこの時代にふさわしい発想方法と言えるでしょう。
アート思考のやり方
問いから始めるのがアート思考といっても、具体的にどういう発想方法なのか、分かりづらいかもしれません。
でもそんなに複雑に考える必要はないと思います。
芸術家のような、どこか狂気じみた、執着心のようなものを我々凡人に求めても、無理があります。
そんな凡人でも、自分の人生に対してこれからどうすればいいのか、という問いは発し続けているものです。
そしてその問いは、論理的思考やデザイン思考で解決できるものではありません。
その問いを、もっと明確に自覚して、問い続けらえるような「状況に自分を置く」努力をすればいいだけだと思います。
具体的な方法としては、次の2つを挙げておきます。
複合的人間を目指す
複合的人間とは、いろいろな知識や教養を身に付けることです(「アート思考」)。
ゼロから物事を考えるには多様性が必要ですから、多様な知識・教養を身に付けておくほうがアート思考を実践しやすいわけです。
資産形成についてよくいわれることですが、知識とは選択肢の多さであり、選択肢の多さは豊かになるために誰でも準備できる唯一の方法です。
そこに持って生まれた才能も財産も必要ありません。
いろいろなことに興味を持って、チャレンジするだけです。
一番楽な方法は、本を読むことです。今なら教育系YouTuber動画を見ることでもいいですね。
このとき注意すべきなのが、知識を偏らせないことです。今まで興味がなかったことでも、ちょっと覗いてみることです。
私も今まで現代アートを観に行くことはありませんでしたが、行動制限が解除されたら行ってみようと思います。
日本現代アートの巨匠杉本博司さんが造った「江之浦測候所」なんかいいかな、と思っています。場所は小田原です。
「江之浦測候所」 https://www.odawara-af.com/ja/enoura/
アウトプットする
何かを制作したり発信したりすることは、問いを発する行為につながります。
どんなものでも構いません。絵画などの芸術活動だけではなく、写真を撮るのでも、ブログを書くのでも、YouTuberになるのでも、自分の好きな分野で“制作”すればいいと思います。
制作とは、自分も知らなかった自分をつくり出す行為です(「ハウ・トゥ・アート・シンキング」)。
イノベーションを生み出すアート思考
経済は1930年代の世界大恐慌以来の不況になるとも言われています。
経済学者のシュンペーターは、こういう状況を打破してくれるのはイノベーションだと言っています。
イノベーションといっても歴史に残るような壮大なものである必要はありません。身近なイノベーションが大事だと説いています。
そして、イノベーションを生むのは、いつも想定外や偶然です。
つまり、論理的思考ではイノベーションは生まれません。
だから今、アート思考が必要なのです。
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