バイデン氏の勝利が確実視されているアメリカ大統領選。
この大統領選は、民主党対共和党という党派の争いでもあるとともに、実は新古典派VSケインズ学派という2大経済学派の争いでもあります。
大統領が替わると大きく経済政策が変わる
みなさんはトランプ大統領とバイデン氏の経済政策の違いは何か、イメージはおありでしょうか?
日本は政権交代しても官僚が替わることはありませんが、アメリカは大統領が替わると実務を担う役人が全部取り替えられるます。
「政治任用職」と言ってアメリカは大統領が任命権をもっています。
その数は、およそ3,500人にも上ります。
ただし重要なポスト約1,200人は上院の承認が必要となります。

このため経済政策も大統領によって大きく変わります。
なお、アメリカには国家公務員(連邦政府職員)が290万人もいます。
その職員達のトップの座を大統領が決めるということです。

新古典派VSケインズ学派
経済的に言えば大統領選は「新古典派VSケインズ学派」と言えます。
経済学者達は、経済に対する基本的な見方の違いで、この二つの学派が激しく争っているのです。
そして政治と経済は切り離すことはできません。
このため共和党と民主党という政治上の党派争いは、そのまま二大経済学派の争いでもあります。
共和党は新古典派、民主党はケインズ学派にもとづいた経済政策を主張します。
共和党であるトランプ大統領は新古典派、民主党であるバイデン氏はケインズ学派なのです。
トランプ大統領は新古典派
トランプ大統領の経済に対する考え、つまり新古典派の考えを簡単に言うと、規制緩和と減税、そして小さな政府です。
同じ共和党だったレーガン大統領時代のレーガノミクス(アベノミクスみたいなレーガン大統領の経済政策のニックネーム)と、ほぼ同じです。
レーガノミクスは、経済学ではサプライサイド経済学と呼ばれる経済学者の一派の考えです。
サプライサイド経済学は新古典派のひとつの考えです。
サプライサイド(供給側)、つまり企業活動を重視する考え方です。
企業の自由な活動を重視するので、規制緩和、減税、自由貿易となるわけです。
減税をしますから、それだけ経営者、つまり富裕層にとって有利となり、富む者はさらに富むという図式につながります。
ここからサプライサイド経済学は、トリクルダウン政策だとも言われます。
トリクルダウンとは、水が滴り落ちることです。
富裕層がたくさんお金を使えば、それが下々の生活も潤すという考えですが、格差を拡大させるだけで、トリクルダウンは失敗だと言われています。
ただし、トランプ大統領は自由貿易だけは否定しました。
ラストベルト(錆びた地帯)と呼ばれる、アメリカの工業地帯を復活させるぞ、というのがトランプ大統領の白人層への訴えです。
ここから、トランプ大統領は基本は新古典派であるにもかかわらず、自由貿易・グローバリズムを否定しています。
ここがトランプ大統領のわかりづらさでもあります。
バイデン候補はケインズ学派
これに対してバイデン候補はケインズ学派の考え方にもとづいて、福祉・環境重視、規制強化、そして大きな政府を目指します。
バイデン候補の経済主張は、同じ民主党だったオバマ大統領と同じ系統です。
レーガノミクスがサプライサイドを重視にするのに対し、オバマ大統領は需要側、つまり消費を促すための政策を重視し、貧困対策などに財政支出を積極的に行い、増税もおこないました。
さらにリーマンショックの原因ともなった、サブプライムローンなど複雑な金融商品は規制しました。
この規制はトランプ大統領になり、どんどん緩和されています。
このことが原因なのか、アメリカは自動車ローンの延滞が社会問題化しており、これが第二のサブプライムショックを招くのでは、とさえいわれています。

バイデン候補が大統領になれば、また規制強化に動くでしょう。
バイデン氏勝利でEV車推進か
一言で言えば、トランプ大統領は企業が自由に活動できるようにすることを重視、バイデン氏は福祉や環境のために企業を規制をしていくタイプです。
このためバイデン氏が大統領になれば、環境規制を強化するでしょうから、一時期後退していた電気自動車への移行がまた進むと思われます。
イギリスなども相次いで自動車のEV化推進を打ち出しています。

となると、日本の自動車産業の転換がさらに早まるでしょう。
私のまわりでも米テスラの車を買う人がちらほら見えてきました。
日本車のEV車は日産リーフなどまだ出始めたばかり。
各メーカーは急いで開発しているでしょう。
また環境などを重視するESG投資がさらに加速するかもしれません。

日本経済にとって、大きな転換となるバイデン氏の勝利です。
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