物価が上昇していくことをインフレ、下がっていくことをデフレといいます。
物価が毎年2%上がっていくなど適度なインフレは経済を活性化させます。
モノの価格が上がるので企業の売上が上がり、企業は将来の需要増に向けて投資を行うからです。
しかし来年2021年はデフレになる可能性がかなりあります。
では物価が下がっていくデフレは私たちにとっていいことなのでしょうか、悪いことなのでしょうか?
デフレで誰が得をする?
ここで私たちの世界を、企業家、投資家、労働者の3つに分類します。
私は労働者代表、あなたは企業家代表、不動産投資で有名なキャイーン天野ひろゆきさんが投資家代表とします。
まず投資家である天野さんは10億円でマンションを一棟買いして、その賃貸収入で悠々自適な生活を送ります。
企業家であるあなたは銀行から10億を借りて事業を大きくします。
労働者である私はあなたの会社に雇われます。
インフレの場合、企業家であるあなたが得をして、労働者(消費者)である私と投資家天野さんは損をします。
この話は別記事「インフレで得をする人損をする人」に詳しく書いてあります。
ではデフレの場合、誰が得をして、誰が損をするでしょうか?
では1年でマイナス50%というデフレが起きたことを想定しましょう。
モノの価格が半分になってしまいました。
しかもデフレ傾向はずっと続くと予想されています。
すると、まず打撃を受けるのは会社です。
モノの価格が下がっていくので会社の売上は減ってしまうからです。
つまり、企業家であるあなはた損をします。
これに対して投資家天野さんが保有しているマンションの賃料は、1年や2年などの期間での契約なので、すぐには下がりません。
賃料収入が下がらず、モノの物価が下がるので実質的に収入は増えます。
つまり投資家天野さんは得をします。
労働者の給料もすぐには下がりません。
給料の改定は半年や1年に一度行われるのが普通です。
投資家と同じように収入は下がらず、モノの物価が下がるので実質的な収入は増えます。
従って労働者である私も得をします。
つまり、デフレでは企業家が損をして、投資家と労働者が得をします。
長期で考えると
しかし今お話ししたことは、あくまで短期間に限ったお話です。
会社の売上が下がっていくので、企業家であるあなたは従業員の給料を下げることや雇用を減らすことをすぐに検討するでしょう。
したがって、長期的には労働者である私は、給料が減ったりリストラに遭うことを覚悟しなければなりません。
またマンションの賃料も、私のような労働者の給料が下がっていきますから、もっと安い物件を探すようになり、天野さんも賃料を下げざるを得なくなるはずです。
つまり長期的に見ると、労働者も投資家もデフレで損をするのです。
さらに労働者の給料が減れば将来に備えて節約志向となり、モノを買うという需要がどんどん減っていきます。これは会社の売上をさらに下げることになり、労働者の給料をさらに下げることにつながります。
デフレはこのような負のスパイラルを招くのです。
だからこそ、デフレはインフレよりも怖いといわれのです。
日本は昭和にデフレを味わった
日本は1929年から始まった世界大恐慌のときにマイナス10%を超えるデフレを体験した。
昭和恐慌と呼ばれるデフレです。
このときの大蔵大臣(今の財務大臣)になったのが高橋是清です。
高橋是清は、就任早々、円と金(Gold)を交換できる金本位制から離脱しました。
これより少し前に日本は金本位制に復帰したばかりでした。これは円の信用力を高めるためでしたが、高橋是清は再離脱を躊躇なく断行しました。
この金本位制からの再離脱により、紙幣を金の保有量と関係なく発行することが可能となり、高橋是清はそれまでの10倍近い貨幣を発行できる法律改正も行っています。
その結果、物価は徐々に上がり始め、日本は世界に先駆けて世界大恐慌から抜け出すことができました。
2021年はデフレなのか
日本はここ5年で物価はほんのわずかですが、上がっていました。
2015年の物価を100とすると、2019年は101.8となります。
しかしコロナの問題で企業の売上は大きく減少しています。
日産は2021年3月期の見通しが6,700億円の最終赤字になると予想しました。
自動車産業は裾野が広いこともあり、自動車会社の業績悪化は多くの労働者に影響を直接与えます。
消費者の買い控えや節約志向でモノの需要が減少すれば、デフレに陥ります。
上で見てきたようにデフレは誰も得をしません。
そこで政府はデフレに陥らないよう、昭和恐慌の高橋是清と同じように、大きな施策をたくさん打ち出しています。
・事業規模200兆円を超えるコロナ対策予算
・通貨の供給量増大
この結果、マネーストック(M2)をの伸び率は4.1%と、ここ10年で最高(前年同月比)となっています。
デフレから脱却するには、近い将来インフレになるかもしれない、というインフレ期待が一番重要です。
GO TOトラベルキャンペーンなど、本来であれば人々の気持ちを巣ごもり状態から転換させて気持ちを上向きにするための施策でしょうが、なかなかうまく行きません。
デフレは誰も得をしません。私たちもその点を頭に入れながら、この新しい世界を生きなければなりません。
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