ブロックチェーンは魔法のノート

魔法のノート 経済の教室

24時間365日誰でも確認できる革命的台帳システム

ブロックチェーンという言葉、今や誰でも知っているけど中身はなんだかよくわからないバズワードになりました。

しかしこのブロックチェーンは今や経済に欠かせない土台となっています。もともとブロックチェーンはビットコインという暗号資産(仮想通貨)のために作られたものですが、それ以外の分野でもどんどん導入が進んでいます。

実はブロックチェーンは意外と単純な仕組みです。知ってしまえば、なんだあ、っという感じです。

この記事では、ブロックチェーンってだいたいこんなもの、という概略を全くの知識ゼロからでもわかるように解説していきます。

ただの台帳が革命を起こす

ブロックチェーンとは、簡単にいってしまうと、ものの出入りを記録する記録簿です。

記録簿でしかないのです!

でもそれが経済の革命を起こそうとしています。

記録簿のことを台帳と言ったりするので、ブロックチェーンのことを「分散型台帳技術」(DLT: Distributed Ledger Technology)とも表現します。この名前にあるように「分散型」であることが最大の特徴であり、経済に革命を起こす理由でもあります。

ここではたとえを使って分散型の意味を理解してみましょう。

住戸が100戸以上に及ぶ大規模なマンションの組合費を管理する方法を考えてみます。

今までなら担当者が会費の入金・出金を一冊のノートに書いて管理したでしょう。会費が正しく記録されているかを確かめるには、ノートを責任者がチェックするという手法が考えられます。

このノートを、組合員であるマンションの住民が見ることはまずありません。ですから担当者や責任者が改ざんしたりしても住民は気づきません。

魔法のノート

ここに魔法のノートが登場します。名前はBLOCKCHAIN!

この魔法のノートはマンションの戸数分だけあって、住民の部屋に備え付けられています。そして、ここがこのノートの最大の魔法ですが、どの一冊でも会費の入金など新しい数字を書き込むと、瞬時にして他のノート全てに自動的に同じ情報が書き込まれます

つまり、全員のノートは必ず同じものなんです。

マンションの住民は、自分のノートを見ればいつでも会費の出入りや残高を確認できることになります。あなたが細かい性格で、自分が出したマンションの会費が正しく処理されているか気になって仕方がなければ、自分のノートを見ればいいのです。

しかもこの魔法のノートBLOCKCHAINは、もうひとつの魔法を持ちます。

新しい数字を書き込むと、その前までの数字をもとにした暗号ナンスを作るのです。

+300,000、+270,000、-210,000 → 236589(暗号ナンス1)

前の情報を含んだ暗号を作るところがポイントです。この暗号も瞬時にして全てのノートに反映されます。

この暗号ナンスが後で効いてきます。

魔法には制約がつきもの

ただし、この魔法のノートBLOCKCHAINには一つ制約があります。こういう魔法には制約がつきものですね。

それは、マンションの住民の過半数人が「OK! 書き込んでもいいよ」 と承認したときしか、他のノートに反映しないという制約です。誰かが自分ノートに書き込んでも、それが過半数の承認を得たものでなければ、他のノートには反映しないのです。

この過半数ルールがあるおかけで、大きなメリットも生まれます。

それが書換が事実上不可能になることです。

住民は自分のノートを書き換えること自体は簡単です。たとえば住民の一人であるあなたが会費を盗み、帳尻が合うように自分の部屋にあるノートや書き換えたとします。しかし自分のノートを換えても自動的に他のノートには反映されません(住民の過半数が認めていないので)。

ですからあなたは他の住民のノートも書き換える必要があります。他の住民の隙を狙って全員のノートを書き換えるなんて、大変な苦労と困難が伴うでしょう。

なんとかして一冊ずつ根気よく書き換えていったとしても、もう一つ大きな問題が生じます。それが暗号ナンスの存在です。

暗号ナンスは前の数字を含んで自動的に生成されるものですから、前の情報が異なれば暗号ナンスも違ってきます。つまりあなたが書き換えた住民のノートと、まだ書き換えていない住民のノートで、暗号ナンスが一致しなくなります。

+300,000、+270,000、-210,000 → 236589(暗号ナンス1)

+300,000、+300,000(書き換え)、-210,000 → 169865 暗号ナンス1が変わってしまう!

この魔法のノートは、新しい情報を書き込むときに全住民の暗号が一致しているかを確認します。もし一致していなければ、誰かのノートが改ざんされていることになります。

あなたが改ざんをしている最中に新しい情報が書き加えられると、全住民の暗号が一致していないことがわかり、改ざんが露見してしまうのです。もしあなたが完璧に改ざんしたいのなら、新しい情報が書き込まれる前にすべての住民のノートを書き換える必要があります。これは非常に困難であり、事実上不可能です。

ブロックチェーンの特徴

この魔法のノートがブロックチェーンそのものです。

本物のブロックチェーンは、参加者全員のPCなどの端末に台帳が記録されており、端末はインターネットでつながっていて、新しい情報が同時にすべての端末に書き込まれる仕組みになっています。新しい情報を書き込む方法は、今説明した魔法のノートとほとんど同じです。

つまりブロックチェーンは、インターネットを使って多くの参加者が同じ情報をもっている記録方法なんです。

ブロックチェーンの特徴をまとめると、次のようになります。

①書き換えが事実上不可能(過半数ルールと暗号があるから)

②トラストレス(Trustless:信頼さえ不要であるという意味)

③トレーサビリティ(追跡可能性)

 

①の書換が事実上不可能であることは、ブロックチェーンが分散型であることと、暗号技術をうまく組み合わせたことにより生まれた特徴です。

トラストレスとは、国や銀行のような信頼する第三者、つまり中央管理者がいなくても、参加者だけで記録を完結させられことを意味します。たとえば銀行の情報は、我々ではなく銀行という中央管理者が握っています。これはある意味、情報の独占です。

これに対してブロックチェーンは参加者全員だけで情報を共有します。情報を第三者に独占させず、我々市民自らが情報を共有するのです。

ブロックチェーンが「革命」と呼ばれるのは、このためです。

さらに中央管理者が自社のサーバーで情報を管理しておらず分散されたシステムであるということは、サーバーの故障やメインテナンスから開放されることを意味します。このため24時間365日稼働することができるというメリットが生まれます(ビットコインなどの暗号資産・仮想通貨は24時間365日取引することができます)。

③トレーサビリティとは、あるものがどこから入ってきて、どこへ行ったかを追跡できるということです。そもそもブロックチェーンはものの出入りを記録する台帳ですから、これは台帳として当たり前の性質であり、ブロックチェーン特有のものではありません。ですが、書換が事実上不可能であることや管理者が情報を独占しないという今説明した二つの要素が加わることにより、安全で透明で誰でもいつでも24時間確認できるトレーサビリティが実現するのです。

なお中央管理者が全くいないブロックチェーンのことを「パブリック型ブロックチェーン」と呼びます。これに対して、特定の管理者が承認作業を行う「プライベート型ブロックチェーン」、認められた複数の管理者だけが承認作業を行う「コンソーシアム型ブロックチェーン」というブロックチェーンもあります。

トレーサビリティが生む新たなサービス

ブロックチェーンは、もともと暗号資産・仮想通貨であるビットコインのために考えられた仕組みです。

しかしブロックチェーンは暗号資産・仮想通貨以外の分野に応用されることが期待されており、次々と新しいサービスを生み出しつつあります。

たとえば違法な方法で採取されたダイヤである「ブラッド・ダイヤモンド」を排除するために、ダイヤモンドの生産・加工・流通・販売・所有という一連の流れを管理することにブロックチェーンが使われつつあります。

高級宝飾品は誰が所有していたかによっても価格が違ってくるので、所有者を証明するためにブロックチェーンを使うというマーケティング的な理由も絡んでいます。

また不法な漁業方法で採られた魚ではないことを証明する海のエコラベルにもブロックチェーンが使われようとしています。

ブロックチェーンを使ったNFTも最近急激に普及しつつあります。NFTとは、Non-fungible token非代替性トークンのことです。トークンとはしるし・象徴という意味ですが、ブロックチェーンをもとに発行された電子的なカードと考えてください。

NFTについては別記事を載せていますので、こちらを参照してください。

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今説明したブロックチェーンの導入例はわかりやすい事例ですが、ブロックチェーンは金融や不動産の分野でおおきく発展しています。

これについてはまた別の記事で説明できたらと思います。

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