ブロックチェーンは魔法のノート

魔法のノート 経済の教室

「24時間365日誰でも確認できる革命的台帳システム」

ただの台帳が革命を起こす

ブロックチェーンとは、簡単にいってしまうと、ものの出入りを記録する記録簿です。記録簿でしかないのですが、それが経済の革命を起こそうとしています。

記録簿のことを台帳と言ったりするので、ブロックチェーンのことを「分散型台帳技術」(DLT: Distributed Ledger Technology)とも表現します。この名前にあるように「分散型」であることが最大の特徴であり、経済に革命を起こす理由でもあります。

たとえば住戸が100戸以上に及ぶ大規模なマンションの組合費を管理する方法を考えてみましょう。従来であれば担当者が会費の入金・出金を一冊のノートに書いて(またはPCに入力)、それを責任者がチェックするという手法が考えられます。このノートを組合員であるマンションの住民が見ることはまずありません。ですから担当者や責任者が改ざんしたりしても住民は気づきません。

魔法のノート

ここに魔法のノートがありと仮定します。この魔法のノートはマンションの戸数分だけあって、住民の部屋に備え付けられています。そして、どの一冊でも会費の入金など新しい数字を書き込むと、瞬時にして他のノート全てに自動的に同じ情報が書き込まれます。つまり、全員で同じノートを管理しており、いつでも確認できるようにしているのです。しかも新しい数字を書き込むと、その前までの数字との合計値をもとにした暗号のようなタグが作られます。前の情報を含んだタグを作るところがポイントです。このタグも瞬時にして全てのノートに反映されます。

ただし、この魔法のノートには一つ制約があります。それは、マンションの住民の過半数が書き込んでもいいと承認したときしか、他のノートに反映しないという制約です。誰かが自分ノートに書き込んでも、それが過半数の承認を得たものでなければ、他のノートには反映しないのです。

一度記録したしたノートを書き換えること自体は不可能ではありません。たとえば住民の一人であるあなたが会費を盗み、帳尻があるように自分の部屋にあるノートや書き換えたとします。しかし自分のノートを書き換えても自動的に他のノートには反映されません(住民の過半数が認めていないので)。ですからあなたは他の住民のノートも書き換える必要があります。住民の隙を狙ってノートを書き換えるなんて、大変な苦労と困難が伴うでしょう。

なんとかして一冊ずつ根気よく書き換えていったとしても、もう一つ大きな問題が生じます。それはタグの存在です。タグは前の情報を含んで自動的に生成される暗号ですから、前の情報が異なればタグも違ってきます。つまりあなたが書き換えた住民のノートと、まだ書き換えていない住民のノートで、タグが一致しなくなります。

この魔法のノートは、新しい情報を書き込むときに全住民のタグが一致しているかを確認します。もし一致していなければ、誰かのノートが改ざんされていることになります。あなたが改ざんをしている最中に新しい情報が書き加えられると、全住民のタグが一致していないことがわかり、改ざんが露見してしまうのです。もしあなたが完璧に改ざんしたいのなら、新しい情報が書き込まれる前にすべての住民のノートを書き換える必要があります。これは非常に困難であり、事実上不可能です。

この魔法のノートがブロックチェーンです。本物のブロックチェーンは、参加者全員のPCなどの端末に台帳が記録されており、端末はインターネットでつながっていて、新しい情報が同時にすべての端末に書き込まれる仕組みになっています。新しい情報の書き込む方法や改ざん対策は、魔法のノートと同じような手法を採っています。

 このようにブロックチェーンは、インターネットを使って多くの参加者が情報を分散して記録する手法なのです。

ブロックチェーンの特徴

 ブロックチェーンの特徴をまとめると、次のようになります。

①書き換えが事実上不可能

②トラストレス(Trustless:信頼がないという意味ではなく、信頼さえ不要であるという意味)

③トレーサビリティ(追跡可能性)

 書換が事実上不可能であることは、ブロックチェーンが分散型であることと、暗号技術をうまく組み合わせたことにより生まれた特徴です。

 トラストレスとは、国や銀行のような信頼する第三者、つまり中央管理者がいなくても、参加者だけで記録を完結させられことを意味します。従来のように国や企業によって情報が独占されず、参加者全員で情報を共有するのです。ブロックチェーンが”革命“と呼ばれるのは、情報が中央管理者に独占されず、みんなで共有するためです。さらに中央管理者が自社のサーバーで情報を管理しておらず分散されたシステムであるということは、サーバーの故障やメインテナンスから開放されることを意味します。このため24時間365日稼働することができるというメリットが生まれます(暗号資産・仮想通貨は24時間365日取引することができます)。

 トレーサビリティとは、あるものがどこから入ってきて、どこへ行ったかを追跡できるということです。そもそもブロックチェーンはものの出入りを記録する台帳ですから、これは台帳として当たり前の性質であり、ブロックチェーン特有のものではありません。ですが、書換が事実上不可能であることや管理者が情報を独占しないという前二つの要素が加わることにより、安全で透明で誰でもいつでも24時間確認できるトレーサビリティが実現するのです。

 なお中央管理者が全くいないブロックチェーンのことを「パブリック型ブロックチェーン」と呼びます。これに対して、特定の管理者が承認作業を行う「プライベート型ブロックチェーン」、複数の管理者が承認作業を行う「コンソーシアム型ブロックチェーン」もあります。

トレーサビリティが生む新たなサービス

 ブロックチェーンは、もともと暗号資産・仮想通貨であるビットコインのために考えられた仕組みです。

 しかしブロックチェーンは暗号資産・仮想通貨以外の分野に応用されることが期待されており、次々と新しいサービスを生み出しつつあります。

 たとえばブラッド・ダイヤモンドを排除するために、ダイヤモンドの生産・加工・流通・販売・所有という一連の流れを管理することにブロックチェーンが使われつつあります(ブラッド・ダイヤモンドについては「4.アフリカの豊富な資源」参照)。また不法な漁業方法で採られた魚ではないことを証明する海のエコラベルにもブロックチェーンが使われようとしています(海のエコラベルについては「34.持続可能な漁業」参照)。これらは、つくる責任、つかう責任や海の豊かさを守ろうといったSDGs実現のためにも役立ちます。高級宝飾品は誰が所有していたかによっても価格が違ってくるので、所有者を証明するためにブロックチェーンを使うというマーケティング的な理由も絡んでいます。

 ブロックチェーンを使ったNFTも最近急激に普及しつつあります。NFTとは、Non-fungible token非代替性トークンのことです。トークンとはしるし・象徴という意味ですが、ブロックチェーンをもとに発行された電子的なカードと考えてください。たとえばデジタル・アートをトークンとしてブロックチェーンで管理するのがNFTです。NFT化してしまえばそのデジタル・アートが本物であること、世界で1枚しかないことを証明することができます。さらに作者から誰にいくらで売られ、それが誰にいくらで転売されたかといった情報も記録できます。これを利用して二次流通(セカンダリー・マーケット)での販売額の数%を作者に自動的に還元する仕組みも簡単に作り上げることができます。今までアートの作者はいったん販売してしまうと二次流通から収益を生むことができませんでしたが、これからは世界が変わります。またNFTはデジタル・アートだけではなく、たとえば絵画のキャンパスや超高級ワインのラベルなどにICタグを埋め込み、その固有IDをNFT化して発行することにより、本物であることの保障や、ものを移動しなくてもNFTの転売だけで売買が確実に成立するなどにも応用されつつあります。

 2021年初頭、日本画として有名な平山郁夫の偽物が出回っていたことが発覚するなど、美術品市場では今なお偽物の問題が絶えません。偽物防止のためにもNFTは有効です。

有名日本画家の偽版画が流通 平山郁夫など10作品:朝日新聞デジタル
 平山郁夫(1930~2009)など有名日本画家の作品を元に作った版画の偽物が流通していることが8日、全国の画商で作る「日本現代版画商協同組合(日版商)」への取材でわかった。大阪府の画商の男性が画家3…

 そして金融への応用として、STOが目されています。STOとは、社債などをブロックチェーンで発行するSecurity Token Offeringセキュリティートークンのことです。従来、社債は証券保管振替機構という特別な管理者により管理されていましたが、これをブロックチェーンを使うことでその管理者を不要にした仕組みです。社債などの金融商品をセキュリティトークン化して発行し、ブロックチェーンで管理するのです。STOには安全で24時間取引ができて、しかもコストを抑えることができるというメリットがあります。2021年4月20日に、SBI証券が始めて1億円を発行し、即日完売となりました。

国内初となる一般投資家向けセキュリティトークンオファリング(STO)実施のお知らせ 
株式会社SBI証券のプレスリリース(2021年4月19日 15時30分)国内初となる一般投資家向けセキュリティトークンオファリング(STO)実施のお知らせ 

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