最近インスタなどSNSで公開する人も増えた家計簿。
その効用と、本当に必要な機能について。
プールの排水溝だけを記録する家計簿
別記事で、家計簿はプールに水の排水溝を監視しているようなものだと説明しました。
蛇口から水が入ってきて、排水溝から出て行く。
蛇口が収入で、水が出ていく排水溝が支出です。
排水溝には、食費、交際費、家賃、水道光熱費などたくさんの種類があるので、それを細かく管理するのが家計簿の目的です。
日本人はもったいない精神が身についていますから、出ていく水の量を細かく管理することが好きなんでしょう。
これほど細かく管理する家計簿を日常的につけているのは、日本人ぐらいだと言われます。
しかし、ここで考えてみてください。
排水溝から出ていく水の量だけ監視していればいいのでしょうか?
真の目的は違うところにあるのでは?
家計簿をつける本当の目的は、プールの水の量が減らないようにするためのはずです。
つまり、本当に管理したいのはプールの水の量です。
真に必要な家計簿の機能
出ていく排水溝ばかり管理していても、肝心の水の量がわからなければ本来的に意味がありません。
そこで今回お届けしたいのがシン・家計簿。
今ある家計簿というのは、収入がいくらで、支出がいくらあったしか管理できません。
プールでいえば、1ヶ月間で水をどれだけ入れて、それがどれだけ出て行ったかという「一定期間に流れた量=フロー」だけを見ていることになります。
このフローだけを記録することを、会計用語で「単式簿記」といいます。
でも重要なのはフローの結果、プールの水にどれだけ入っているかも管理することでした。
プールに貯まった水の量のことを、「ストック=今この時点でいくらあるか」といいます。
このフローとストック両方を管理することを、会計用語で「複式簿記」といいます。
両方管理するので、複式と呼ぶわけです。
「複式」という言葉だけ取り出すと、なんだかカッコよくありませんか?
(本来的には<原因>と<結果>を両方記録するので複式なんですが、まあその辺はどうでもいいです)。
プールは一つではない
実は、複式ではなく、従来の家計簿であっても、プールが「○○銀行の普通預金」だけ、つまり1だけであればさほど問題ありません。
普通預金の預金通帳自体が、プールの水であり、収入も支出もすべてそこで管理されているからです。
でも実際には、プールが一つだけという人はそれほど多くはないでしょう。
特に家族がある方なら、複数の銀行に預けている人も多いでしょうし、それぞれに積立預金、定期預金など種類の違いもあります。
資産運用している場合は、株式とか債券、投資信託というプールもあることになります。
さらに不動産や、金・銀などのコモディティ、外国為替、ビットコインといった暗号資産など、資産形成をすればするほどプールは増えていきます。
家計簿は自分の財産を守るためにつけるものですから、資産形成をしている人ほど、役にも立たなければ意味がありません。
ですが、従来の家計簿ではそれができません。
プールの水の量も同時に監視するためには、複式簿記による家計簿が必要です。
つまり、シン・家計簿とは、複式簿記の発想を採り入れた家計簿のことです。
複式による記録
シン・家計簿を完璧にやろうとすると、「仕訳(しわけ)」と呼ばれる複式簿記の形式で記録する必要があります。
この仕訳の基礎をすべての人が学び(二週間もあれば簡単に身に付けられます)、資産形成に役立てるべきだと、私は常々考えています。
なお市販の「日商簿記テキスト」は、たとえ3級であっても「試験のための学習」という側面が大きく、自分の資産を守るための教養としてはやや無駄な部分が多すぎます。
複式簿記については、薄い入門書で充分です。
ですがこれがなかなか辛い。
簿記の勉強を独学でする人の大半が、テキストの最初の数ページで断念するといわれています。
最大の原因は、<無味乾燥な記録方法>の勉強だからです。難しいわけではありません。
ただの記録テクニックですから。
オラクルのようなデータベースの形式を学ぶようなものです。
オラクルを学ぶというと格好いいのですが、簿記を学ぶというと、どうしても地味ですね。
これはたぶん、試験のための勉強、的な簿記教育しか行ってこなかったことの弊害だと思います。
ですが、自分の財産を守るためだという目標が定まっていれば、それほど難しいものではないですし、適切な管理をすることで自分の財産が増えるのであれば、むしろ楽しいはずです。
特に将来の、いざというときのための備え、セーフティーネットを作るという意味での資産形成は、適切な管理をしないと、むしろムダになります。
資産形成をしているつもりなのに、排水溝からダダ漏れ状態、となってしまうのです。
それを防ぐためには、シン・家計簿で適切に管理することが重要です。
このブログの別記事で「イメージでつかむ簿記」を載せています。
会社の財務諸表を読めるようになるための記事ですが、複式簿記は4つの箱に取引をぶちこむんだ、というイメージはつかめると思います。
それがイメージできたら、あとは家計簿に複式的な考えを応用して、シン・家計簿にするだけです。
お薦めは、Excelでざっくりシン・家計簿をつけることですが、これについてはまた別記事で。
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