金利と株価の関係を易しく解説(2) 2021年株価は大暴落するのか?

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2021年初頭のバイデン大統領の200兆円に及ぶ経済対策の発表で、景気はよくなるという期待が高まりました。新型コロナのワクチン接種も始まり、景気回復期待はますます高まります。

景気がよくなるというと「期待」は、株価を上げるというのが普通でしょうが、株価を下げる原因となることもあります。

人々の「期待」というのは、思わぬ影響をあたるものなんです。

また2021年2月になり、国債に変調の兆しが現れます。国債の相場が崩れることにより「21世紀型大恐慌」が来るという専門家もいます。

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国債なんて自分たちの暮らしとはあまり関係のない、という思っている方が多いかと思います。
しかし、実は国債は経済にとって巨大な存在であり、その変調は私たちの暮らしにも大きな影響を与えます。

この2つについて簡単に解説したいと思います。

2月は景気がよくなるという期待からハイテク株が下がった

2021年2月下旬、アメリカではハイテク株を中心に大幅な下落をもたらしました。

その原因となったのが国債の利回りです。

景気がよくなるという期待が高まると、利率の低い国債を売ってより利回りのいい商品へ資金を移し替える動きが活発となります。

このため国債を売る人(機関投資家)が多くなり、市場での債券価格は下がります(売る量が多ければそれだけ債券価格は安くなっていき、購入する側はその分利回りが高くなる)。

国債利回りについてはこちらの記事を参照してください。

この金利上昇が、株価を下げる結果を招きました。
それが2021年2月26日の1,200円に及ぶ株価下落です。

では国債金利の上昇がどうして株価を下げることになったのでしょう?
理由は意外と単純で、人の欲望の強さです。

たとえばあなたはアメリカのAI企業の株を1億円持っています。
AIというハイテク株を購入するに至った動機は何でしょうか?
AI、自動運転・EVなど、そういうハイテク株というのは、将来もの凄い利益をあげるだろうと期待して買っているはずです。

株というものは将来の利益を先取りして購入しているようなものです。
将来の利益への期待が大きいハイテク株は、その分株価も高くなりがちです。
トヨタに比べたらまだまだ販売量が小さい米テスラの時価総額の高さを見ていただければ,そのことも頷けるでしょう。

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ここで景気回復の期待から、アメリカ国債の金利(利回り)が1%上昇したとします。

国債は安全資産ですから、これによって確実に1%余計に儲かることが確定しました。

AI企業という割高な株式1億円持っているあなたはどのように思うでしょうか?

ハイテク株は株価が高くなりがち、つまり割高であることを先に説明しました。しかもかなり先の収益まで見越したリスクの高い値付けです。

そこへ安全資産の国債が1%も利回りがあがったので、収益期待のベースが底上げされてしまうことになります。
つまり安全な運用先の収益率が上がったので、それに比べてリスクが高いハイテク株の魅力が相対的に下がってしまうのです。
国債利回りの上昇で、ハイテク株の旨みが薄れた、ということです。

だから相対的に魅力がなくなったハイテク株を売って、安全な国債とか銀行株のような割安な株に資金を移し替えるという動きが短期的にドンと起きた、というのが2021年2月25日のアメリカ相場です。

このように別な業種の銘柄等に大規模に投資資金をシフトすることを「ヘビーローテーションHeavy Rotation」と表現したりします。

金利上昇で変わる米株市場、ハイテク銘柄から1兆ドル吹き飛ぶ
債券利回りが上昇するのに伴い、米株式市場では犠牲者が続出している。

2月は国債入札が不調・・その意味は

さらにここに来て、アメリカの国債発行についての懸念が多く聞かれるようになりました。

アメリカだけでなく日本や欧州も、多額の国債の新規発行によって経済対策に充てようとしています。多額、というのは100兆円クラスの金額です。

それだけ国債市場というのは、莫大なお金が動いているんです。

たとえば日本の株式市場の年間売買高は800兆円ぐらいですが、債券市場(ほとんど国債)は2,000兆円を超えています。
国債市場の方が、圧倒的に大きいのです。

しかし国が国債(赤字国債)をいくら発行しようとしても、買ってくれる人がいなければ始まりません。もし購入需要が少ないとすると、国債の入札価格は下がっていき、結果利回りは上昇します(国債の新規発行は入札方式で行われるのが基本)。


上で説明した回復期待によるものとは、また別な意味での利回りの上昇です。

日本もアメリカも今まで多額の国債を発行し続け、金融機関は買い続けてきました。
金融機関は安定的に儲かると思うからこそ国債を購入し続けてきたのですが、金利の低さもあって収益源となりづらくなっています。
そしてもうこれ以上国債を買おうという意欲が薄れてきた、という声が聞こえはじめたのです。

先月2月のアメリカ国債7年物の入札は記録的低調でした。

米国債市場、入札控え警戒感強まる-2月の需要不振で疑心暗鬼
打ちのめされている米国債市場が再び試練の1週間を迎える。経済成長やインフレの見通しが改善する中で売り込まれた年限を中心とした大規模な入札を吸収する必要に迫られる。

入札が不調で買う人が少なくなれば、債券の価格が下がっていきます。価格が下がるということは、買った人は償還時に儲かる、つまり利回りが上がることを意味します。

国債の利回りが上がっていくと、それを参考にして利率を決めている借入金利率なども徐々に上がっていきます。このことは企業の投資意欲を妨げる結果となります。

アメリカ企業は多額の借金をして自社株を買い取り、ROE(自己資本収益率)を高くする経営をしてきました。日本のソフトバンクは借金をして他社を買収する戦略で事業規模を大きくしています。
これらの戦略は金利が安いからこそ成り立っている方法です。

もし国債入札の不調が続き、国債金利が上昇し続ければ、この戦略が成り立たなくなります。

さらに国としても利回りが大きいということは、利子負担が大きくなるということを意味し、国の財政がますます悪化、国の財政に対する信用力が落ちていく可能性もあります。
これは将来に対する不安を煽り株価を下げる要因ともなります。

国債入札の不調は、こんな未来を予想させることになり、最初に述べたバイデン大統領の経済対策などによる景気回復期待とは裏腹に、むしろ大恐慌=株価大暴落がやってくるのはでは、となるわけです。

株式市場も国の運営も、大規模な国際金融システムが裏にあることよって成り立っており、その中に流れているお金という血液の大部分は「国債」であるともいえます。その国債が流れなくなってしまったら、身体はうまく動きません。

このまま国債の流れが止まり、本当に株価が大暴落するかはなんともわかりません。もちろん楽観論ももちろんあります。
3月24日のアメリカ国債の入札は堅調だったようで、ひとまず安心しました。


ただ、しばらくは国債入札状況や国債金利に目を配っておく必要はありそうです。

国債や金利については新著「グラレコで学ぶ経済本」も参照してください。

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