お金はどうやって増えていくのか

お金の教室

最近インフレを懸念する報道が増えました。お金が増えているからです。
お金は銀行による貸し出しによって増えるとされていますが、その不思議さについて解説していきます。

お金が増えている

世の中に出回っているお金の供給量=マネーストックがどんどん増えています。

昨年2020年の夏頃からマネーストックの伸び率は、前年同期比で年9%以上となっています。
それ以前はだいたい3%ぐらいが平均的な増加率だったので、昨年の伸びは突出しています。

マネーストック : 日本銀行 Bank of Japan

ここからインフレになるのでは、という懸念も出ています。

モノの量が変わらず、お金の量だけが増えれば、相対的にお金の価値が下がるからです。
つまりインフレとは、モノの価格が上がるというより、お金の価値が下がるということなんです。

お金の量はマネーストックで測ることが一般的です。
マネーストックとは、簡単にいうとすべての銀行口座の合計額のことです。

ほとんどの人がお金を銀行に預けていて、家の中に何百万円も持っている人は稀でしょう。
車を買ったり、家を買ったりするときの高額な決済は銀行決済が通常です。
最近はコンビニなでの買い物もスマホ決済、Suicaなどの電子マネー決済が普及しましたから、それらも最終的には銀行による決済となります。

つまりお金の流通は、銀行が必ず絡むのです。だからお金の量をマネーストックで測るわけです。

インフレ対策

マネーストックが増えてから実際にインフレになるのは2,3年後だと言われています。

この場合のインフレとは、日銀が目標としている2%程度のものではなく、年10%に近い激しいものです。

年40%、50%を超えるようなハイパーインフレが日本に来ることはあまり考えられませんが、年10%ならバブル時代に経験済みです。

あの時は銀行借り入れの利率がどんどん上がっていって(バブル崩壊直前は9%程度)、住宅ローンの返済で悩んでいる人を何人も見ました。
現金でお金を持っているとどんどん価値が目減りしていきますから、みんな利率のいい金融商品に預けようと躍起になっていたのも覚えています。

数年後にまたそんな世界が来るかもしれません。
ただ預金利子も高かったので、普通に暮らすのにはそんなに苦しくなかった覚えがあります。

インフレに強い株式

インフレに強い金融商品といえば、株式です。

適度なインフレになれば今年よりも来年の方が売上が上がると経営者は期待しますから、売上増に備えて投資をしようと判断します。
人員を増やしたり、在庫をより多く抱えたり、設備投資をしたりです。

このようなインフレ期待が新たな投資を生み、景気がよくなるのでさらに企業の売上が上がる。
こういう好循環が生まれるので企業の成績がよくなり、株価も上がる、というのが適度なインフレ時に株価が上昇する仕組みです。

とはいえ、現在の株価上昇は日銀による大規模な金融緩和政策によるものだという指摘もあり、その効果が近々崩壊するという懸念もありますから、将来の株価の予想だけは付きません。

現金がなくても増えるマネーストック

マネーストックは、銀行が貸し付けることで増えていきます。

これを信用創造といいますが、こちらの記事で詳しく説明しています。

銀行が貸し付けることによって実際の現金の何倍にもなるマネーストック。

ここでひとつ面白いクイズを出しましょう。

銀行に預金が全くなくても、貸付を行うことはできるでしょうか?

普通の発想では、銀行というのは預金をまず集めて、その集めた預金を原資に貸付をしている、となると思います。

ではここで読者の方には銀行になってもらいます。
わたくし澤はしがない平民です。

あなたは手持ちの現金5億円で「YOU銀行」を立ち上げます。
YOU銀行には今、5億円のキャッシュがあります。

あなたは次にこのキャッシュ全額使って店舗用の土地建物を購入しました。
YOU銀行には資産として5億円の土地建物があります。
その替わりキャシュがゼロとなりました。

ここで平民である澤が、どうしても小さなマイホームが欲しいので1千万円貸してくれとYOU銀行に頼みに行きます。

さて、あなた銀行は澤にお金を貸すことができるでしょうか?

貸付が預金を作る

あなたのYOU銀行の預金はまだゼロですから、現金=キャッシュは一銭もありません。

預金ゼロだからお金を貸すことなんてできない!と早まってはダメです。

銀行がお金を貸す手順をよく考えてみましょう。
YOU銀行が澤に1千万円を貸す前提として、澤はYOU銀行の口座を作る必要があります。
現金でどんと1千万円を貸す銀行などありませんから、口座に振り込むことが前提となります。

では次にYOU銀行が澤に1千万円を貸し付けにはどうするのかというと・・・

澤の口座に10,000,000円とキーボードで入力するだけです。
それだけで、、、もう澤の口座には1千万円があることになります。

ここまでは現金=キャッシュは絡んできません。
つまり現金=キャッシュがなくても、澤の口座に1千万円作ることはできてしまうのです。

銀行にとって預金は預かっているものですから負債です。
そしてこの1千万円はYOU銀行が澤に貸し付けたものですから、YOU銀行は澤に対する貸付債権という資産を持つことになります。

つまり、YOU銀行には預金という負債1千万円と、貸付という資産1千万円があることになります。
会計的にいえば貸借は一致しており、なんら問題ありません。

つまり、銀行は預金がゼロでもお金を貸すことができるんです。

内生的貨幣供給論

ここで私がお金を預金から引き出そうとすると、いわゆる取り付け騒ぎになります。下手をするとYOU銀行はつぶれます。
でも1千万円を銀行から現金で引き出す人など、ドラマ以外ではほとんどないでしょう。

ただ、澤は家の購入代金として1千万円を借りたので、現金として引き出さないにしても、不動産会社に1千万円振り込まなければなりません。
この場合でも問題ありません。

YOU銀行の澤名義の口座から、別な銀行の不動産会社名義の口座に名前が変わるだけですから。
現金=キャッシュを実際に動かす必要ありません。

つまり、銀行にはキャッシュが一銭もなくても、お金を貸すことができるんです。

キャッシュがなくても貸し出せるどころか、キャシュがなくても澤の預金口座1千万円が生まれています。

つまり、銀行は預金されたお金を貸し出すのではなく、貸し出しが預金を生むんだというふうに考えることができるんです。

これを内生的貨幣供給論といいます。

そうじゃないという考えもありますが、銀行やお金の役割を考えていくと、たとえば赤字国債の問題なども見え方が変わってきます。

経済は不思議なことがたくさん詰まった面白い学問なんです。

マネーストックなど経済キーワードをグラレコで解説した本が2021年3月31日発売です。
こちらもよろしく。

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