今さら聞けない円安、円高の仕組み ドル円為替レートの基礎

ドル円 お金の教室

昨年2020年末は円高傾向だったドル円為替レートは、今年2021年になり円安へと動きました。

今回はこのドル円為替レートがなぜ動くのか、の基礎をわかりやすく解説します。

為替とは

今回は2021年3月31日に発売予定の私の新著
小学生でも理解できる グラレコで学ぶ経済本
を元に書いています。

為替レートとは、ドルと円といった、異なる通貨同士の交換レートのことです。

昨年2020年末では103円台だったドル円は、今年2021年2月末で107円近くまでになっています。

103円だったドル円が、107円になったということは、円高になったのでしょうか?円安になったのでしょうか?

1ドル買うのに以前は103円ですんでいたのが、107円必要になったということですから、1ドル買うのに4円だけ多くの円が必要になりました。

多くの円が必要になった、つまりドルは高くなったということを意味します。

つまり円安ドル高になったのです。

為替が動く理由

このように、為替レートが動く基本原理はいたってシンプルです。

ここであなたが100万ドルもっているとして、どうしても円に替える必要があります。そのためには逆に100万ドル欲しいと思っている円の保有者を探してきて、交換してくれませんかと、頼む必要があります。

100万ドル欲しいと思っている円の保有者がたくさんいれば、みんなが手を挙げて交換していいよといってくれます。

あなたは100万ドルでできる限りたくさんの円が欲しいでしょうから、いい条件を出してくる人と交換したいですよね。

ここで交換してくれる人の中で競争が発生します。

最初は1ドル103円だった交換レートが、104円払う、105円払う、106円だ、107円だと値が上がっていきます。

この場合の”値が上がっていく”とは、1ドルで交換できる円がたくさんになる、言い換えればドルの価値が上がっていくという意味ですから、円安ドル高になります。

つまり、ドル円為替レートは、円を売りたい人とドルを買いたい人、逆に円を買いたい人とドルを売りたい人の、需給のバランスによって決まるのです。

インターバンク市場

上の例ではドルが欲しい円の保有者がたくさんいてみんなが手を挙げてくれたので、円の供給がたくさんあることを意味します。

ドルを円に替えるとは、ドルを売って、円を買うことと同じです。

ドルを買いたい人が一定で、円を売りたい人が増えれば、円の価格が下がっていくます。
これが円安ドル高の仕組みです。

どこで誰が売買しているのかというと、それは銀行同士です。
これをインターバンク市場といいます。

為替レートは、このインターバンク市場でのドル円の需要と供給のバランスで決まっているのです。

銀行間の取引ですから、為替レートは唯一のものがあるわではなく、銀行によって異なってきます。
ドル円の価格が銀行によって微妙に異なっているのはこのためです。

株式の場合、日本では東京証券取引所(東証)というほぼ独占的な大市場があるので、東証の価格がその銘柄の唯一の株価を意味しますが、為替の場合はあくまで銀行間の取引価格であり、複数存在しているものなのです。

そもそもなぜ円とドルを替えようとするのか?

ドル円の為替レートは、毎日、リアルタイムに変化しています。

ということは、ドル円の需要と供給が日々リアルタイムに変化していることを意味します。

でもなぜ、ドル円の需要と供給がそんなに変化するのでしょうか?
買いたい人と、売りたい人が、どうして変化するのでしょうか?

これがわからなければ、ドル円為替レートが変化する理由がわかりません。

国債金利が絡んでくる

たとえば、日本の定期預金の金利が0.1%、アメリカの定期預金の金利が5%とすると、あなたらなどうするでしょう?

ドルの定期預金で運用したほうが儲かることは確実です。

このため円をドルに替えて、ドルで運用しようとする人が出てきます。

円を売ってドルを買う人が増えてくる、円の供給が増えてドルの需要が増えるので、このケースでは円安ドル高となります。

ただ、為替レートが大きく動くような「金利」とは、定期預金金利ではありません。

国債の金利です(正確には国債の利回り)。

なぜなら、国債は銀行などの機関投資家が何兆円という単位で保有されており、わずかな金利の変動で銀行などの儲けが大きく変わるからです。

もしアメリカの国債金利が上昇し、日本の国債金利との差が広がれば、アメリカ国債を買うために日本の機関投資家が円を売ってドルを買おうとします。

このため、円安ドル高に動くことになります。

今年2021年に入って円安ドル高になったのは、このアメリカの国債金利上昇によるものです。

バイデン大統領の200兆円に及ぶ景気対策で国債金利(正確にはその他の債券を含めた債券金利)が上昇し、日米金利差が開きました。
今年2021年の2月末の10年もの国債金利は、日本は0.1%より少し下、アメリカは1.6%ぐらいです。アメリカの金利もそれほど高くはありませんが、日本と比べると10倍以上です。
ですから円安ドル高傾向なんです。

バイデン大統領の景気対策で国債金利が上がる理由は、また別な記事で説明したいと思います。

円キャリートレード

日本の金利が低くてアメリカの金利が高い場合、日本の銀行借り入れの金利もアメリカに比べて低いことになります。

この場合、日本の銀行で円を借りて、それをドルに替えてドルで米国国債などで運用すれば、金利差分だけ儲かることになります。

これを円キャリートレードといいます。
円を売ってドルを買うので、円安ドル高になります。

日米金利差(日本 < アメリカ)がものすごく開いていた時代は、この円キャリートレードで円安ドル高になる傾向がありました。

このほか、為替は次のような原因で動きます。

経常収支
二国間のインフレ、デフレ

詳しくは私の新著「小学生でも理解できる グラレコで学ぶ経済本」を参照してください。

金融リテラシーで儲かるか損するかが決まる

ただし、現実の為替の動きというのは、これらいろいろな要素が複雑に絡み合って動くものです。
ですので将来の為替レートを予測するのは至難の業です。

でもここで説明したような大まかな原理を知っていると、ドル円の動きを見て経済の動きがなんとなくつかめるようになってきます。

バイデン大統領の200兆円の経済対策が発表された時点で、為替レートは円安ドル高になると、ある程度は予測できましたし、これで儲けた人もたくさんいるでしょう。

為替レートだけではなく、ハイテク株を中心に株価がいったん暴落するというのは教科書的な動きであり、これを予測して儲けた人もいるかと思います。

投資をしていなくても、まずはニュースを見て、なるほどね、と思えるようになったら、普段の生活が楽しくなっていきます。

この楽しくなるというのが金融リテラシーであり、自分の資産を守る・減らさず増やすためには、この金融リテラシーの向上は欠かせません。

コメント

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