世界の自動車産業は一気に脱ガソリン社会に向かっています。
ガソリン車に代わって電気自動車EV車の普及を目指しています。
しかし日本はこれとは別に、水素自動車での覇権を狙っています。
この記事は、電気自動車と水素自動車の基礎と、メリット・デメリットについてお伝えします。
ガソリン車の新車販売が禁止される
2030年から2040年にかけて、世界中でガソリン車の新車販売が禁止される予定です。
新車販売ですから、既にもっている車が走れなくなるわけではありません。
新しく買えなくなるだけです。
たとえばイギリスは2030年からガソリンだけで動く車の新車販売が禁止されます。
つまりトヨタのプリウスなど日本勢が得意とするハイブリット車などは規制されません。
しかしその後、2035年からハイブリッド車も禁止となります。
アメリカのカルフォルニア州も、2035年からハイブリッド車を含めて、ガソリンを使う車の新車販売は全面禁止となる予定です。
日本は2030年代半ばに、ガソリンだけで動く車の新車販売を禁止する方向を示しています。つまりハイブリッドはOKです。
ただしこれらの規制は、法令で確実に決まったものばかりではありません。
たとえばイギリスは、昨年2020年の11月にジョンソン首相が表明しただけです。

なぜ各国は2030年頃から脱ガソリン車を目指すのか?
世界の国はどうして2030年頃から脱ガソリンを目指しているのでしょうか?
これは2015年に締結されたパリ協定が絡んでいます。
パリ協定とは、気候変動に関する国際協定のことで、2050年時点で地球の平均気温を産業革命以前の気温と比べて、+1.5度未満におさえるという努力目標を掲げています。
これを受けて2016年頃から、各国が具体的な政策目標を表明し始めました。
その一環が、この脱ガソリンということです。
2050年に+1.5度未満にするには、2030年頃から規制を始めないと間に合わないのです。
パリ協定と脱ガソリンについてはWWFのホームページを参照してください。

EV電気自動車が覇権を取るのか?
脱ガソリンに向けて、EV電気自動車の開発競争が激しくなっています。
EV車といえば、米国のテスラですね。
テスラの時価総額は50兆円を超えており、世界のベスト10に入っています(2020年末現在)。

日本で時価総額1位の会社と言えば・・・
そうトヨタです。
でもトヨタは世界のランキングでみれば40位前後、時価総額25兆円ぐらいで、テスラの半分です。
でもテスラの車は日本ではそんなに走っていないですよね。
それでも昨年2020年、テスラは約50万台販売しました。

今はまだ価格が高いので、セレブの車という印象がありますね。
これに対しトヨタの販売数は1,000万台です(グループ全体)。
トヨタの方が20倍販売しているのに、時価総額ではテスラの半分。
それだけEV電気自動車が期待されている証拠でしょうか。
水素自動車
日本勢もEV車は開発しています。
しかしこれとは別に、水素を燃料としたFCV(Fuel Cell Vehicle)=水素自動車を国を挙げて推進しています。
FCV水素自動車とは、燃料電池(Fuel Cell)で水素と酸素を化学反応させて電気を起こし、その電気でモーターをまわして動く自動車のことです。
温室効果ガスである二酸化炭素だけでなく、窒素酸化物などの有害物質を全く出さない究極のエコカーとも言われます。
経済産業省は、このFCV普及のためのロードマップを発表しています。
・2025年:ハイブリッド車並みの価格
・2030年:水素スタンドを全国に900箇所(ガソリンスタンドは約2万9千)
あと10年で水素スタンドを全国に900箇所というのはどうなんでしょう?
世界初の量産型FCVであるトヨタの新型MIRAIは、走行距離が850kmです。
東京から京都に行ける距離なので、900箇所あればなんとなく大丈夫かという気もします。
ではガソリンスタンドは今どれだけあるかというと・・・
全国に約2万9千です。

比較になりません。
普及にはもう少しスタンドが増える必要があるでしょうね。
EV、FCVのメリット
ではここで、EV・FCVのメリットを考えてみましょう。
EV社のメリット
・テスラをはじめとして世界の自動車会社が開発し、生産台数、販売台数も増えている
・生産台数の増加に伴いコストがどんどん安くなってきている
・EV車はガソリン車に比べて構造が簡単なので、IT企業やベンチャー企業がどんどん参入している
EV車のベンチャー企業としては、たとえば3Dプリンターを使ってEV車を造っているXEV社のYOYOが有名です。

YOYOはクラウドファンディングのKickstarterで100万円ほどで買えます(日本では走れません)。
では次にFCVのメリットについても考えてみましょう。
FCVのメリット
・水素は液化できる
・燃料の充填がガソリン並みの速さ
EVの弱点として、充電時間の遅さが挙げられます。究極充電も30分、普通充電だと半日かかることもあります。
今すぐ走りたいのに充電がない!というときに困ります。このためEV用の充電器は駐車場に置かれていたりします。
これに対しFCVはガソリンを入れるのと同じような感覚で液体水素をいれますから、燃料が足りなくなったらすぐ充填できるメリットが大きいです。
EV、FCVのデメリット
では次にデメリットについても考えてみましょう。
EVのデメリット
・充電に時間がかかる(急速充電も30分、普通充電だと半日かかることも)
・バッテリーが弱まってくる
・元となる電気を発生させる発電所の問題
先ほど述べたようにEVの最大の弱点は充電時間ですが、そればかりではなく、バッテリーが弱まってくると、走行距離が短くなることも考えられます。
これはスマホのバッテリー問題と同じですね。
また、弱まったバッテリーを処理するときの廃棄問題もあります。
さらにEV車自体は温室効果ガスや有害ガスを出しませんが、もともとの電気を作るための火力発電や原子力発電などの問題を解決しなければなりません。
FCVのデメリット
・開発途中の技術なのでコストが高い
・水素の扱いづらさ
先ほど挙げた経済産業省のロードマップでも、コストをいかに下げるかが課題として取り上げられています。
コストを下げるには、EV車のように大量生産できるようにしなければなりません。
日本がFCV水素自動車にこだわる理由は?
FCV車であるトヨタの新型MIRAIは、800万円と高級外車並みです。
ですが、国の補助金により実質500万円ぐらいで買えます。

(以下:ご指摘を受け内容をより適切に修正しています。2021年1月23日)
なぜ日本はEVだけではなく、FCVにもこだわるのでしょうか?
FCVは究極のエコカーであることや、FCVがEVよりも向いている用途もあることがその大きな理由ですが、それとともに日本が水素自動車の開発では先頭を立っているからです。
FCVを一般向け販売をしているのは世界で日本のトヨタだけです。
これはプリウスが世界初のハイブリット車として大々的に世界の脚光を浴びたことを思い出させます。
しかしこのハイブリットで世界の先頭を走っていたことがあだとなり、日本はEV開発競争で出遅れたと言われています。
テスラとトヨタの時価総額をみても、これは明かです。
先ほど述べたように、トヨタは世界の時価総額ランキングベスト50に入る唯一の日本企業です。
しかしわずか数十年前の、平成元年にはベスト10のほとんどが日本企業でした。

日本企業が再び輝くためにも、新しいイノベーションが必要なのです。
実は、FCVは長距離バスやトラックではEVよりも向いていると言われいます。
つまり未来はEVで決まり、というわけでもないのです。
日本の活力を取り戻すためにも、FCV水素自動車には頑張ってほしいものです。
コメント
EV対FCVという構図は間違っていますよ。FCVは発電機を積んだEVです。トヨタは覇権取る為にがんばっているのではありません。あらゆる地域のユーザーにその地域に適したモビリティを提供しようとしているのです。当然EVも開発しています。石油の採れる国砂漠の国にはランクルのような車も提供します。資源の無い日本は、太陽光や風力、汚泥等あらゆる物から作れて、長期保存が効く水素が有効なのです。水素にすれば発電所の無い地域にも運ぶ事ができます。電線で送電ロスする事もありません。だから日本でFCVを開発しているのです。これはトヨタ1社でやる事では無く、日本全体でFC社会を作らなければいけないのです。テスラvsトヨタとかEV vs FCのような構図を煽るのはメディアとして間違っていると思います。ラジオを聴いていて気になったのでメールしました。 長文失礼しました。
貴重なご指摘ありがとうございます。
少し対決構図を前面に出しすぎたでしょうか。
FCVが電気を発電して動く車であることは記載しておりますが、具体的な企業に関してはより適切な表現となるよう修正も考慮いたします。
今後もラジオともども、よろしくお願いいたします。