Nizi Projectを見てても、韓国に対する憧れを日本の女性は持つようになっています。
前半につづいて、K-POPの力の源泉を大学の先生の論文などから探ります。
韓国に憧れるアジアの中の日本へ
1990年代までは、「日本に憧れるアジア」という構図が成り立っていました。
戦後アジアの中でいち早く高度成長を成し遂げた日本は、アメリカ的大衆文化の普及も群を抜いていました。
日本は、一番アメリカに近いアジア、だったのです。
それがK-POPや韓国ドララマによりその構図が解体するとともに、「韓国に憧れるアジア」としての日本、という日韓のポジションの交換がなされてしまいました。
このことは『「アイドル」イメージの差異の表象-日韓オーディション番組「PRODUCE48」を事例に-』田島悠来に詳しく書かれています。
K-POPはローコンテクストだから強い
日本のアイドルと韓国のアイドルとの違いを一言で言うと、日本は<ハイコンテクスト>、K-POPは<ローコンテクスト>だといいます。
コンテクストとは、文脈のことです。
ハイコンテクストとは、何かの文脈を読む際、前提となる背景や価値観、民族性、歴史などを知らないと理解が難しいことを言います。
これに対してローコンテクストとは、そのような背景を知らなくても理解できることをいいます。
K-POPは、アメリカの音楽文化に寄せた音楽を志向しています。
NiziUのJ.Y.Parkもマイケル・ジャクソンに憧れていたと公言しています。
そしてアメリカ音楽は、すなわちワールドワイドな音楽であることも意味し、そこにターゲットを持っていくことにより、K-POPはローコンテクストな音楽となったのです。
『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』香月孝史に詳しく書かれています。
デジタル・ディスラプションがアイドルのあり方も変えた
K-POPも以前は握手会などAKB方式で売上を伸ばしていました。
日本でもK-POPの握手会は盛んに行われいました。
しかし、それが数年前より、YouTubeによるミュージックビデオの拡散、Spotifyなどのサブスクモデルによる商圏場拡大へと方向転換しています。
K-POP普及にサブスクのプレイリストが大きな役割を果たしているといわれています。
特にプレイリストには国境はありません。
ローコンテクストだからこそ、K-POPがSpotifyなどのプレイリストに並んでも違和感がないのです。
このため、ペルー、カナダ、フランス、トルコなどで再生回数が1億回を超えています。
(「The Record2019 June」RIAJ)
K-POPの市場は日本に迫る
AKBとK-POPの違いを考えると、AKBは日本的でありながら多様性を重視し、K-POPはワールドワイドでありながら、均一性を重視しています。
K-POPは最初から外向き、特にアメリカを向いているとも言えます。
このため、K-POPはアメリカの文化的<ヘゲモニー>から完全に自由にはなっていないという指摘もあります。
ヘゲモニーとは、覇権とか指導的地位という意味のドイツ語です。
またK-POPは韓国国内の市場規模の少なさから海外に目が向いている、とよく言われますが、それよりもワールドワイドに活躍するスターを作り出したい――という「夢」「人気や名声への渇望」が見える、という指摘もあります。
(『K-POP市場は本当に巨大か? ファクトで分析するその「実力」』飯田一史)

日本と韓国の音楽産業の規模は、2017年のデータで比べてみましょう。
日本の国内市場が3千億円。
韓国は国内市場が600億円ですが、海外市場がほぼ同じ600億円と合計1,200億円です。
人口規模を考えると、もはやK-POPは日本の音楽産業に追いついたとも言えます。
これから日本の音楽産業は、NiziUなどのようにK-POPの力を借りる、という図式になるのでしょうか?
コメント