コロナの問題で求人が大幅に減っています。
中でもAIなどにより自動化がしやすい職種は30%以上減っていると報道されていました(日本経済新聞2020年7月19日)。
それ以外の職種は10%減だったので、3倍以上減っていることになります(2020年5月、6月の前年同月比)。
これからいったい、どんな仕事がなくなっていくのでしょうか?
AIはここまで進化している
コロナ問題で、AIが仕事を奪う速度が急に速まったかもしれません。
AIに奪われやすい仕事は定型的な仕事です。
たとえば電話オペレーターも含まれています。
AIを使った顧客対応といえば、少し前まではチャットボットでした。
家電のカスタマーサポートなどは、LINEなどを使ったチャットボットを導入している企業がたくさんあります。
不具合の内容などを入力して送信すると、AIが判断して適切な回答を返信してきます。

最近はこれに音声の合成技術が劇的に進歩し、AIが作った文章を自然な人間の声で流すことが可能となりました。
LINE AiCallのサンプル音声を聞いてみて下さい。

AIはそれこそ指数関数的に賢くなっています。
公認会計士はなくなるのか?
少し古い話となりますが、AIが話題となったきっかけは、2013年にオックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授らによって発表された「AIで消える職業 なくなる仕事」でしょう。
(原題は「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?」)
上記の論文はアメリカの職業分類によって、その仕事がAIに取って代わられる可能性-原文ではComputerisableと表現しています-を数値で表しています。
日本ではこの内容を表面的にとらえて、誤解を与える報道なども相次ぎました。
たとえば公認会計士が不要になるなどです(泣)。
これは「Accountants and Auditors(会計士と監査人)」という職業分類のComputerisableが、0.94(94%)だとしていることからくる報道でしょう。
公認会計士の受験勉強をしている大学生のご両親がこの報道を見て不安となり、大学に問い合わせがあったという話もよく聞きました。
公認会計士の勉強をするための専門学校(TACや大原)の受講生も一時期、減ったともいいます。
しかしこれは、公認会計士の業務のうち定型的な業務はAIによってなくなる、というのが正しい表現だと思います。
このことは弁護士の部門を見れば分かります。
弁護士はどうだ?
弁護士を補助する役割を担うパラリーガルやアシスタント(Paralegals and Legal Assistants)という職種がAIに取って代わられてしまう可能性は、0.94(94%)とAccountants and Auditorsと同じ数字です。
しかし弁護士(Lawyer)は0.035(3.5%)とかなり低い数値となっています。
弁護士の業務の中で、条文や過去の判例を調べたり契約書の内容を精読することが多くの時間を占めると言われます。
このような仕事はAIなら短時間で間違えることもなく、しかも24時間やり続けることができます。
アメリカではこの業務はパラリーガルが受け持ちます。
これに対して日本ではパラリーガルという制度はありませんから、職業分類では弁護士になるかもしれません。
すると弁護士のAIに取って代わられてしまう可能性も高くなってしまうでしょう。
つまり職業分類の内容とその仕事内容をよくみなければ正しい判断はできない、ということです。
日本の職業分類ではどうだ?
その後、2015年に日本の職業分類によるAIやロボってによる代替可能性について、野村総合研究所とオズボーン准教授の協同研究が発表されました。
これによると2030年、つまり10年後には、日本の労働人口の49%がAIやロボットに取って代わられる可能性がある、とあります。
ちなみに、その中には公認会計士も弁護士はなく、「会計監査係員」というしアシスタントの名称が載っています。
この報告書では、次のような職種がAI等による代替可能性が高いとされています。
- 一般事務員
- 医療事務員
- 行政事務員
- 経理事務員
- 銀行窓口
- CADオペレーター
- 金属プレス工
- クリーニング取次店員
- 建設作業員
- スーパー店員
- 自動車組み立て工
- バイク便配達人
- ホテル客室係
- レジ係
- 路線バス運転手
いずれも定型的な業務であることが特徴の仕事です。
路線バス運転手などは自動運転によりなくなると予想される職種です。
どういう場合にAIに仕事を奪われるのか?
仕事を人間ではなく、AIに任せようと経営者が思う最大の理由はなんでしょうか?
それは次の2点に集約されます。
1.コスト
2.人を雇うことの苦労
人間は柔軟性に富んだ動物です。
教育さえすれば、意外とどんなことでもこなしてしまいます。
つまり従来は人間が一番安価で役に立つ「労働力」だったのです。
これをAIやロボットに替えようと思うには、その人間よりもコストが安くなければなりません。
その典型が工場における製造ラインです。
同じことの反復継続という仕事は、人間の集中力には限りがあるという欠点から、ロボットに譲ったほうが圧倒的に生産効率がよくなり、引いてはコストが安くなります。
したがって上記に示した職種でも、人間の応用力の広さという特徴を生かして、「やっぱり人間のほうがコストが安い」となれば人が使われ続けるでしょう。
第2の「人を雇うことの苦労」はもう少しやっかいです。
AIやロボットは文句も悩みも言いません。
台湾の大手電機メーカー鴻海(ホンハイ)科技集団のCEO郭台銘氏は
「人間も動物である以上、100万の動物を管理するのは悩みの種だ」と言っています。
(出典「限界費用ゼロ社会 THE ZERO」ジェレミー・リフキン)
入門的仕事の消滅の意味
スーパー店員などは、従来であれば入門的な職種でした。
高校生や大学生がまず行うバイトがコンビニなどを含めた店員でしょう。
これがAIやロボットによりなくなってしまうということは、初歩的な仕事の消滅を意味します。
このため人間は創造的な仕事に特化することになると予想されます。
でもみんながみんな、いきなり創造的な仕事ができるというわけでもありません。
当然、お金を稼ぐことができるのか、という不安も出てきます。
ではどうすればいいでしょうか?
そこで働く世代に月額数万円を給付するベーシックインカムの議論が出てくるわけです。
最低限の生活は保証されるから、高度な仕事ができるようになるまで頑張れるというわけです。
先の都知事選でもベーシックインカムのことに触れる候補者もかなりいました。
でもベーシックインカムなんて財源がないから実際にできるはずない、と思っている人も多いと思います。
その話はまた別な機会にしたいと思います。
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