インフレの意味 得をする人損をする人

得をする人損をする人 経済の教室

この記事はTOKYO FMの「ジュグラーの波~澤と美音のまるっと経済学」2020年7月23日放送分の原稿をもとに書いています。

またこの記事は今話題の本「現代経済学の直観的方法」長沼伸一郎著を参考にしています。

日本は長い間デフレに困っています。
モノの価格がなかなか上がらない状態です。

でもコロナ問題でインフレになるのでは、という懸念も実はあります。
サプライチェーンの分断によってモノの供給が不足する可能性があるというのがその理由です。

インフレとはモノの価格が上がっていく現象、つまり物価上昇ですが、デフレよりインフレの方がいい、というのが一般的な感覚でしょう。
日銀も年2%のインフレを目標としています。

インフレで得をするのは誰だ?

ではなぜインフレの方がいいのでしょうか?
インフレでみんなが得をするのでしょうか?

ロバート・キヨサキさんの本「金持ち父さん貧乏父さん」では、仕事を4つに分類しています。このうち、経営者と投資家は金持ち父さんとなり、会社の従業員と私のような専門家は貧乏父さんとなります(汗)。

金持ち父さん貧乏父さん

従業員と専門家は同じ労働者として扱うと、仕事は次の3つに集約されます。
1.労働者 2.企業家 3.投資家

ここで私は労働者代表、あなたは企業家代表、不動産投資で有名なキャイーン天野ひろゆきさんが投資家代表とします。

 
まず投資家である天野さんは10億円でマンションを一棟買いして、その賃貸収入で悠々自適な生活を送ります。
企業家であるあなたは銀行から10億を借りて事業を大きくします。
労働者である私はあなたの会社に雇われます。
ここで1年で100%というインフレが起きました。モノの価格が2倍になりました。
するとこの3者で得をする人と、損をする人は誰でしょう?

企業家であるあなたにとって、モノの価格が2倍になるとは、もし同じ数量の商品が売れるとすると、売上が倍になります。
でも借りていた借金10億円はそのままです。インフレになっても借入金の額はそのまま10億円なのです。
売上が倍になっていますから、借金の負担度はその分半減することになります。
インフレは企業家にとっては有利に働くのです。

では投資家である天野さんはどうでしょう?
インフレになったとしても、賃料は1年間や2年間などは変えられない契約となっています。
従って、急にインフレになると賃料の値上げがそれに追いつきません。
投資家はインフレで損をすることになります。


では最後に、労働者である私はどうなるか?
企業の売上が倍になり経営状態がよくなりますから、従業員の給料もよくなるでしょう。
でも給料が上がるのはだいたい1年後です。賞与が出るかもしれませんが、それも期末など少し先のことです。
給料が上がるまでの間、労働者は今までと同じ手取額で、インフレで倍の価格となったモノを購入しなければなりません。
労働者はインフレで損をします。

以上から、インフレの影響は人によって異なり、企業家は得をするけど、労働者と投資家は損をすることになります。

金融緩和はインフレを招く?

日本銀行は、新型コロナで落ち込んだ経済を立て直すために、
必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる
と発表しています。

その措置の一つとして通貨供給量の増加が挙げられます。
マネーストックとは、簡単に言えばすべての人・企業の預金通帳の合計額を言います。

ではこの通貨供給量の伸びで、物価は上がるのでしょうか?
基礎的な経済学では、通貨の量が増えると、物価は上がるとされます。
この理論については、別記事「インフレの正体」を参考にしてください。

基礎理論では通貨の量が増えればインフレとなりますが、実際は違うという説が有力です。

なぜかというと、先ほどの例でみたように、投資家である天野さんが10億円のマンションを買うとか、企業家であるあなたが銀行から10億円を借りて事業を拡大するとか、「お金を使うという需要」があるから、マネーストックは増加します。

この<お金を使うという需要>があるからこそ、マネーストック、つまり通貨量の増加は実際のモノの値段である物価を上昇させますが、この需要がないのにいくらお金を増やしてマネーストックが増えても、物価上昇にはつながらない、とされるのです。

日本の最近のマネーストックの伸び率(前年同月比)のグラフを見てください。

(出典:日本銀行「マネーストック速報」)

 

今年の3月からマネーストックの前年同月比は急激な伸びを見せています。

企業が今後の経営不振を見込んでお金を銀行などからたくさん借りたことが、このマネーストックの増加を招いたと考えられますが、そのお金はデフェンシブなお金であり、設備投資などの積極的な経営のための資金ではありません。

これは需要は生まれず、いくら通貨の量が増えてもインフレにはなりません。

では刷ったお金はどこへ行ったのかというと、企業の内部にため込まれるか、物価の算定には入らない株式投資などに向かってしまいます。

一般に言われる物価は正しくは「消費者物価」といって、ここには株式投資は入りません。

このため株価は上昇するけど、物価は上がらないというおかしなデフレ現象が起きるわけです。

まとめ

・インフレになると、企業家は得をするけど、労働者(消費者)と投資家は損をする。
・経済学の基礎理論では通貨の量が増えればインフレになる。
・コロナ対策もありマネーストックは増えているけど、そのお金が設備投資など需要に向かわないので、お金が増えてもなかなかインフレにはならない。

コメント

  1. […] インフレの場合、企業家であるあなたが得をして、労働者(消費者)である私と投資家天野さんは損をします。この話は別記事「インフレで得をする人損をする人」に詳しく書いてあります。 […]

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