お金は簡単に10倍になる! 信用創造(後編)

紙幣 経済の教室

金(Gold)の「預かり証」から始まった紙幣の誕生により、2倍の取引ができるようになりました。

これを信用創造といいます。
信用創造の基本については、前編を参照してください。

預かり証から脱却

金(Gold)の預かり証から近代的な紙幣が生まれたのは、イングランド銀行が誕生した1694年頃の話です。

もともとが金の預かり証ですから、その頃の紙幣は、金との交換ができる制度となっていました。これを金本位制といいます。

ただこの金本位制、資本主義経済が発展していく過程では、足かせとなってしまいます。

金の保有量に紙幣の発行量が左右されてしまうのが問題となるのです。

どんなに経済が拡大していっても保有している金以上の紙幣を刷れませんから、自ずと限界点が見えてきます。
このため多くの国が金本位制を廃止し、中央銀行が貨幣の発行を管理する管理通貨制度へと移行していきます。

最後に残ったアメリカも1971年に突然、金本位制(金ドル本位制)を廃止します。
これがニクソンショックと呼ばれるものです。

国は金本位制を廃止したおかげで、金の保有量に関係なく紙幣が刷れるようになりました。

現代の信用創造

ところで、みなさんは銀行の紙の通帳使っているでしょうか?

ITの発展で銀行に預けている残高がパソコンとかスマホのデジタルな数字で表現できるようになっています。

デジタル通帳とかWeb通帳ですね。

紙幣をいちいち金庫から出してきて相手に渡さなくても、銀行振込やスマホ決済でお金の移動はできてしまいます。
こうなると、信用創造は2倍どころではなくなります。

たとえばあなたがお給料100万円を紙幣でもらって、全額A銀行に預けたとします。
A銀行のデジタル通帳には100万円という残高が記録されます。

そのA銀行に飲食店企業がやってきて、新たな高級食材仕入のためにお金を貸してくださいと申し込みます。
運良く90万円だけ借りることができた飲食店企業は、材料費の支払いとして材料仕入先のB銀行に90万円振り込みます。

B銀行のデジタル通帳に90万円と記録されます。

そのB銀行にペットショップ企業がやってきて、珍種の猫を購入するための資金としてお金を貸してくださいと申し込みます。
ここでも運良く81万円だけ借りることができます。ペットショップ企業は81万円を、猫の輸入業者のC銀行に振り込みます。

C銀行のデジタル通帳に81万円と記録されます。

この時点でデジタル通帳には合計いくらあるでしょうか?

A銀行100万円+B銀行90万円+C銀行81銀行=271万円となります。

でも、現金はあなたが給料として受け取った100万円しかありません。

それが倍以上の271万円になるというのは、信用創造の効果がより大きくなったということです。

なお、通帳の合計額のことをマネーストックといいます(昔はマネーサプライといっていました)。
当初のお金の何倍ものマネーストックが発生するという、不思議な現象を起こすのが信用創造です。

銀行の貸し付けがお金を10倍にする!

このカラクリは、簡単に言えば銀行による又貸し、つまり貸付によるものです。
銀行の経済的機能というのは、この信用創造によるマネーストックの拡大にあるのです。

ところで、上の例では預かった100万円の全額は貸し出していませんね。
預かった額の90%だけ、貸し出しています。

これは銀行は預金者から預かった額のうち、一部を引き出し用の準備金として残しておかなければならないからです。

つまり預金額のうち10%を残し、90%を又貸しする設定としているのです。

現実の経済でも残しておく金額は10%ぐらいになることが多く、だとすると、信用創造は次のような流れが無限に続くになります。

テキスト ボックス: 貸し出し

これは学校で習った「無限等比級数」です。

では最初100万円であった現金が信用創造で何倍になるか計算してみましょう。

ここでは詳しい説明は省きますが、無限等比級数の公式で10倍の1,000万円となります。

       S:預金合計  a:最初の預金(100万円)  r:貸出率(90%)

お金は銀行に預けるだけで、簡単に10倍に増やせるのです!?

たとえば政府がコロナ対策で給付金を10兆円配ると、それを銀行に預けさえすれば、この信用創造によって10倍の100兆円のマネーストックになる可能性があるのです。

以上、お金の信用創造についてでした。

コメント

  1. ラーメンご飯チップス より:

    高校で学んだ無限等比級数で経済効果を計算できるだなんて驚きました。

    • 澤 昭人 澤 昭人 より:

      経済学は数学が駆使されています。
      特に微分積分ができないと経済問題は解けないのですが、私も根っからの文系人間なので苦労しますね・・。

  2. […] 別記事「お金は簡単に10倍になる 信用創造」で、銀行が又貸しを繰り返すことによって、最初100万円しかなかったものが何倍、何十倍にもなるというお話をしました。貨幣の信用創造といわれる機能です。 […]

タイトルとURLをコピーしました