初心者でも分かるゲーム理論/トイレットペーパー騒動(前編)

トイレットペーパー騒動 経済の教室

どうしてトイレットペーパー騒動なんて起きたんだ?
所詮、日本人の倫理観はその程度のものなのか。
そんな疑問に答える「ゲーム理論

今回の記事は、「ゲーム理論入門の入門」(鎌田雄一郎著/岩波新書)を参考にしています。
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トイレットペーパー騒動と倫理観

5月になり新型コロナによるトイレットペーパー騒動もほとんど収まってきました。
3月頃は私も大型スーパーに朝早く並びに行ったもんです。

このトイレットペーパー騒動の発端はデマでした。

中国からの輸入がストップして在庫がなくなるぞ、
という根も葉もないデマから始まったものです。

このデマを信じて多くの人が突然買い占め・買い溜めするようになり、あっという間に店頭からトイレットペーパーが消えました。

そして、その状況を見て多くの人が不安に襲われ、さらに買い占めに走りました。

実際にはトイレットペーパーは9割以上日本製造で原料も充分あったので、買い占める必要はありませんでした。

その真実がニュースで盛んに流されても、しばらくの間買い占めは収まりませんでした

この状況から、日本人の倫理観もこの程度か、みたいな言葉もずいぶん聞かれましたね。
確かに嘆かわしい状況だな、と誰しも思いますよね。

 

しかしこのトイレットペーパー騒動、
倫理観とかではなく、経済学的に、つまり論理的に説明できる行動なんです

それが経済学の一分野である「ゲーム理論」です。

 

ゲームと言っても、スマホゲームのようなものではありません。

相手の出方を予想して自分の行動を決める、という状況のことです。

たとえばじゃんけん。

まずは論より証拠。

実際にじゃんけんをしてみましょう!

 

1回戦目はお互いにグーを出して引き分けだったとします。

 

では2回戦目。

あなたの出す手を考えてから、写真の下に移動してください。
私が出す手が描かれています。

最初はグー、じゃんけん・・・

いかがでした?

あなたの勝ちですか、負けですか、それとも引き分けですか?

どうしてあなたはその手を出したのでしょうか?

グーを出した人(あなたの勝ち!)→1回戦目がグーだから、相手(澤)はチョキを出すかもしれないと考えました?

チョキを出した人(引き分け)→1回戦目がグーだから、相手(澤)はパーを出すかもしれないと考えました?

パーを出した人(あなたの負け)→1回戦目がグーだから、相手(澤)は裏をかいてまたグーを出すかもしれないと考えました?

 

じゃんけんは相手がなにを出すかを読んで自分の出し手を決める、スリリングなまさにゲームです。

ここで経済学における「ゲーム」とは

相手の行動を予測して自分の行動を決める、そして相手も同じことをしている

こういう状態のことを言います。

日本語では「戦略的状況」です。

 

この「相手の行動を予測して自分の行動を決める」というのが、ミソです。

 

じゃんけんなんてなにも考えずに適当に出しているだけだ

 

という方もいるでしょう。

では、ここで例えをじゃんけんから、企業間の競争に変えてみましょう。

携帯電話3社のゲーム

あなたは新しい5Gの通話料を決めるドコモの責任者です。
1ヶ月いくらにすればいいのか?
気になるのはソフトバンクやauという競争相手の出方でしょう。

ソフトバンクが1ヶ月4千円の定額サービスを出しそうだという予測が立つなら

あなたはそれに合わせて4千円にするか、またはそれ以下の金額にすることを意思決定するでしょう。

  

こんな感じで企業はライバル企業の出方を予測しながら、自分の行動を決めています。

これがゲームです。

 

ナッシュ均衡

このゲーム理論を用いて、冒頭のトイレットペーパー騒動を分析してみましょう。

結論から言うと、人々は買い占め(買い溜め)に走ることは避けられません!

倫理観とかの問題ではなく、ゲーム理論では、そうすることが「ベストな選択」なんです!

  

もう一度ゲームの定義をおさらいすると、

自分は相手の出方を考えて意思決定し、相手も自分の出方を予想して意思決定するという戦略的状況

のことです。

 

このゲームにおいて大事なのは、

相手がどう出るかという予想に対してベストな反応をする

ことです。

 

そして、たとえば2人のゲームでしたら、

2人ともベストな反応をしている状態を特に「ナッシュ均衡

と呼びます。

 

ナッシュ均衡は、このゲーム理論を打ち立てたアメリカの数学者ジョン・ナッシュから名付けられたものです。

なおこのジョン・ナッシュを主人公にしたラッセル・クロー主演の映画「ビューティフルマインド」はアカデミー賞をとりました。

あなたは2人組の泥棒

このナッシュ均衡でトイレットペーパー騒動を分析するために
あなたには大泥棒ねずみ小僧&ねこ小僧になってもらいます。

 

ねずみ小僧とねこ小僧(あなた)は超富裕層のA氏邸宅に忍び込みダイヤを盗みましたが、あなたがドジを踏んで指紋を残してしまい、捕まってしまいました。

でもつかまる前に2人でダイヤをある場所に隠していました。

澤警部は何としてもダイヤの隠し場所を2人に白状させて、窃盗罪として禁固5年の刑にしたいと考えています。

そこで澤警部は2人を別々の取調室に入れ、隠し場所を白状させるためのある条件を出しました。

さて、その条件とは・・。

 

今回はここまで。次週をお楽しみに。

コメント

  1. […] こちらの記事は「トイレットペーパー騒動の真実(前編) ゲーム理論」の続きです。まずは前編の記事をご覧になってから、こちらをお読みください。 […]

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