複式思考①

資産形成 経済の教室

明日でさえ見通せない現代。

収入をどう確保し、そして稼いだ財産をどう守ればいいのか、多くの人が悩んでいると思います。

こういうときほど、財産を守り築くための、基本が大切です。
それが「5つの複式思考」です。

この記事はシリーズものになる予定です。

 

資産家に共通する5つの複式思考

資産形成のテクニック的な話はちまたに溢れていますが、その基礎となる思考方法を身に付けないまま、小手先に走っている人を多く見ます。

<人まね>では財産は築けませんし、守れません。

財産を大きくした人の思考には、かならず共通の思考方法があり、だからこそ資産家になれたんだと思います。

自分の財産は誰でも大切なはず。
だったらそれを守るための基礎となる思考方法は誰でも身に付けるべきです。

その財産形成に必要な思考方法を、ここでは「複式思考」と呼びましょう。

複式思考とは「複合的なものを整理し、区分し、単純に表現する」という考え方を身に付けることです。

 

具体的にはつぎの5つの思考方法です。

  1. ストックとフローを区別して考えられる
  2. ストックのバランスを感じられる
  3. フローを分解し組み立て直すことができる
  4. 未来のストックを変動させる収益費用を理解できる
  5. 見える化することにこだわる

 見える化の最終目標:自分キャッシュフロー表を作れる

 

この記事は、見える化の最終目標である「自分キャッシュフロー表を作れる」ことを目的としています。

 

自分の力で資産を築いた多くの人には、面白いほど共通していることがあります。それこそウォーレン・バフェット※1のような大御所から、投資家としては素人だと自称しながら1億円を貯めた井上はじめさん※2のような方まで、共通しているのは、

自分なりのキャッシュフロー的な考えがある、ことです。

※1:世界で最も成功した投資家。事業の成長性などを見極めた長期投資スタイルをとっている。
※2:「33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由」の著者

 

キャッシュフローとは、現預金の動きのことです。
これを表にしたものがキャッシュフロー表です。

といってもお小遣い帳や家計簿とは違います。それらは単式思考の帳簿です。

皆さんに目指してもらいたいのは、複式思考の管理表です。

 

キャッシュフロー表というと、上場企業が発表している「キャッシュ・フロー計算書」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこまで形式的なものではありません。

 

基本をおさえながら、もっと自由に、自分の目的に応じたものを作ればいいのです。

そのためには、「複式思考」の1から5を身に付ける必要があります。

 

トレーニングをするなら試合に出ないと

この「複式思考」、実は目新しいものではありません。

気づいている方も多いでしょうが、「複式思考」は「複式簿記」からネーミングしたものです。

 

この複式簿記、中世後期、大航海時代のヨーロッパで概ね確立されていました。

大航海時代とは、単なる冒険時代ではありません。難破するかもしれないリスクを冒してアフリカやインドに出かけ、当時貴重品だった香辛料などを持ち帰るという、ハイリスク・ハイリターンな商売だったのです。

貴族などの資産家は航海毎に船主に出資し、持ち帰った香辛料などを売りさばいて得た利益を分配していました。

航海する船員も命がけでしたが、出資する方もそれこそ命がけです。
難破したときの悲哀は、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」にも描かれています。

命がけの商売ですから、分配だって命がけです。

そこから「複式思考」の基礎となる、複合的なものを整理し、区分し、単純に表現する、考え方が生まれてきたのです。

人類は、こういう崖っぷちのときほど、素晴らしい解決方法を見いだすものです。
(複式簿記の発展はそれ以外にも様々な要素がありますが、ここでは省略します)

 

複式簿記は、まさに複式思考の生みの親です。

一般的に「簿記」とは、この「複式簿記」を表しています。

簿記と聞くと、なんだかつまらない「書き方」のように聞こえるかもしれませんが、簿記とは、単なる記帳法のテクニックではありません。

複式簿記を学ぶことは「複式思考」を身に付けるトレーニングになります。

ただし「複式思考」を身に付けるにあたって、複式簿記の学習は必要条件ではありません。なので機械的な反復練習が嫌いな人は、無理に簿記を学ぶ必要はありません。
最初からこの記事で「複式思考」を身に付けて自分の財産を守りましょう。

したがってここでは簿記の話には触れません。

ですが、野球の試合に出るには素振り練習ぐらいはしたほうがいいのと同じように、簿記学習をしたほうがより深く「複式思考」を身に付けることができます。

簿記の勉強というと、日本では「簿記検定」を受けるというのと同義になることがほとんどですね。
検定試験に受かるためには、どうしても反復練習が必要となります。

試合(自分の財産を守り築く)に出るためなら厳しいトレーニングを厭わない、という方は、検定試験から入るのもいいでしょう。

でも練習だけして一度も試合(自分の財産を守り築く)をしないという愚だけは避けてくださいね。

そういう人を日本では多く見ます。

厳しいトレーニングをするなら、絶対試合をやりましょう!

 

5つの複式思考 その1.ストックとフローを区別して考えられる

複式思考の最大の特徴は、財産の増減であるフローと、その結果であるストックを区別して考えられるかにあります。

たとえばあなたはプログラミングが得意なので、自宅でプログラミング教室を始めたとしましょう。

授業料は月3万円です。

このとき、

フローとは、月3万円の収入といった、一定期間に生じる増減のことです。

ストックとは、現金預金などの、ある時点での残高を意味します。

 

そんなに難しいことはありませんね。

そんなの常識でわかる

と感じる人がほとんどでしょう。

 

でも経済的な取引は、このストックとフローが<原因と結果>という関係によって複合的に絡んでいるものです。

簡単なようでいて、実際は意外と区別するのが難しいものなんです。

しかもここに、未来のストックを変動させる「収益と費用」という概念が絡みます。収益費用については「4.未来のストックを変動させる収益費用を理解できる」で説明しますから、ここではまだ触れません。

 

あなたは、次のクイズで明確にストックとフローを意識することができますか

クイズ:

受講生が1クール10ヶ月分の授業料30万円を持って来ました。受付はバイトの娘が担当しています。しかし授業料は前払だと割引が適用され25万円になります。そこであなたは5万円を受講生に返してこいと娘にいいました。娘はこれ幸いと5万円のうちから2万円を自分の財布に入れてしまい、残り3万円だけ返還しました。受講生は総額27万円払ったことになりますが、娘がくすねてしまった2万円を足しても29万円にしかなりません。あとの1万円はどこに行ったのでしょうか?

 

単純なようでいて、ストックとフローの盲点をうまく突いたクイズです。
あなたなりの答えを見つけてから、解答編へ移ってください。

これ以降は別記事に続きます。

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