前回の記事「量子コンピュータ 最初の一歩! 前編」で次の計算式の話をしました。
[電子ちゃん]+[光子さん]
ここで電子ちゃんも光子さんも量子です。
したがってどちらも測定する前は0と1の「量子重ね合わせ」状態にあります。
つまり
1量子+1量子
によって4通りの計算式 [0+0]、[1+0]、[0+1]、[1+1]が、1つの手順で計算できてしまうことを例えを使って説明たしわけです。
詳しくは「量子コンピュータ 最初の一歩! 前編」をご覧下さい。
この記事では、実際に量子コンピュータでこの計算をしてみたレポートをお届けします。
本当に量子コンピュータは4通りの計算式を1つの手順で計算できるのでしょうか!
[電子ちゃん]+[光子さん]を量子コンピュータで計算してみる
実は量子コンピュータは世界の誰でも使えます。
IBMがクラウド型の量子コンピュータを公開しているのです。
量子コンピュータを誰でも使える、そんな時代になってきたんですねえ。
実際に触ってみると、その面白さが分かること請け合いです!
みなさんも実際にIBMのサイトにアクセスして触ってみてください。
なお私は科学者ではないので、表現などが正確でないこともあると思いますが、そこはご容赦を。
あくまで最初の一歩ですから。
まずIBM Quantum Experienceのサイトにアクセス
ID登録したら、こんな画面が出てきましたか?

左側の<Settings>タブにある<Quantum registers>の数値を4にしましょう。

Quantumというのは量子のことです。
この数値を4にするということは、4量子を使うということです。
未来の技術である量子を4つも使えるなんてなんて贅沢な、と思いませんか!
1量子+1量子だから2量子では?
と思うかもしれませんが、ここでは入力(計算式)に2量子、出力(答え)に2量子使います。
q[0]とq[1]が入力、q[2]とq[3]が出力になります。
q[0]などの右側に |0> とありますね。
こういう表現を「ブラケット記法」といいます。
|0> なら、量子をまず0にセットするという意味です。
量子に特殊なマイクロ波を当てて強制的に0にします。
最初は、量子重ね合わせにはなっていないんです。
初期状態ではすべての量子は0となっています!
量子重ね合わせにしよう
では次に
上のアイコンが並んでいる箇所から、青い「H」というアイコンをq[0]とq[1]の五線譜のような線の上にドラッグしましょう。
Hアイコンは「アダマールゲート」というもので、量子を重ね合わせにすることを意味します。
ゲートというのは条件式(もし○○だったら××せよ)のようなものです。

これで
量子であるq[0]とq[1]は、0と1の重ね合わせ状態となりました!

待望の量子重ね合わせです!
じっくり眺めて感動に浸ってください!(笑)
1+1を計算するのも意外と大変
ではここで
1量子+1量子
を計算してみましょう。
本当に4通りの計算式[0+0]、[1+0]、[0+1]、[1+1]が1つの手順で計算できてしまうのでしょうが?
でも、残念ながら、量子コンピュータはボタン一つ押せば答えが出てくる、わけではありません。
これは従来のコンピュータでも変わりません。
電圧の高低を使って1+1のような単純な計算をするためだけでも、裏では複雑な仕組みを使っています。
二進法ですから桁を繰り上げるための仕組みが必要なんです。
これが意外と面倒。
電気系の学校などで学ぶ「半加算器」や「全加算機」がこれに当たるようですが、私は詳しくないので興味がある方は別なサイトで。
市販されているコンピュータは、キーボードで1+1と押せば、裏で複雑な計算をやってくれるセッティングがあらかじめできているんです。
IBMのQuantum Experienceは、そんなセッティングはない素のままの量子コンピュータですから、ここはゼロからセッティングをしなければなりません。
でもそんなセッティングの話は小難しくなるので、ここでは結果だけを記載しておきますね。

五線譜のような線に配置しているアイコンは次の通り。
紫色のアイコンはトフォリゲート
トフォリゲートというのは、指定した2つの量子(コントロールビットといいます)がどちらも1だったら、出力の量子のうち指定した量子(ターゲットビットといいます)を1にせよ、という条件式です。トフォリというのは人の名前です。
青いアイコンはCNOT(シーノット)ゲート
CNOTゲートは、コントロールビット1だったら、ターゲットビットを1にせよ、という条件式です。CNOTはControlled NOTです。
黒いアイコンは測定せよというアイコンです。
詳しい話をここでは省略しますが、上のようにアイコンを配置すると、
1量子+1量子
で4つの組み合わせ[0+0]、[0+1]、[1+0]、[1+1]が同時に計算できて、その計算結果の確率を出すことができます。
結果は下のようになります。
同じ計算を1,024回繰り返して出た組み合わせの%が表示されます。

1量子+1量子とだけやっていますから、
[0+0]、[0+1]、[1+0]、[1+1]のどれが計算されるのかは、わかりません。
確率の問題となるんですね。
このため、4通りの計算結果が%で出てくるんですね。
不思議。
まあ、入門としては、こんな感じで実際に答えが出てくるのか、と分かってもらえば充分です。
なお、上の答えはシミュレーターのものです。
従来のコンピュータを使って、「量子コンピュータで計算したらこうなるだろう」と予想させているだけです。
実際に量子コンピュータで計算させると、こうなります。8,192回同じ計算を繰り返しています。

なんじゃこりゃ!
4通りじゃないじゃないか!
この理由はまた別な機会に。
コメント
[…] これについては、別記事の「1量子+1量子を実際に量子コンピュータでやってみた」に詳しく書きましたのでそちらを参照してください。 […]