世界大恐慌は来るのか?

世界大恐慌 経済の教室

なぜ世界大恐慌が来ると言われるのか?

コロナウィルス拡大防止のための経済封鎖で実体経済が悪化しています。
モノが売れません。
というか、そもそも店を開けることができません。

今のところ、経済封鎖がすぐに解かれ急激に経済状態がよくなる、とは考えづらい状況です。

でも金融は比較的安定しています。
株価もそこまで下がっていません。


むしろ一度1万6千円台まで落ち込んでからは、上昇傾向です。
この記事を書いている2020年4月28日午後2時現在では、日経平均株価はやや下がっていますが、それでも1万9千円台後半を維持しています。

このまま経済は踏みとどまってくれるでしょうか?

 

しかし、多くの専門家などが「世界大恐慌以来の不況」になる恐れがあると警告しています。
これはなぜでしょうか?

借金したほうが得だった

日本は2010年の「包括的な金融緩和政策」からずっと金融緩和策を打ち続けていました。
簡単に言えばずっと金利を低く抑え、市場にお金を供給しまくる政策を採ってきたのです。

このためとにかく金利が安いんです。
だから企業は、銀行借入や社債・CPの発行でお金を調達しまくっていました

たとえばソフトバンク。
社債とCPが5兆円を超えています(2019年12月末残高-ソフトバンクIR情報より)

社債とは、企業が債券を発行することにより、一般投資家などからお金を借り入れる手段です。一定期間後に返済しなければなりません。
CPとは、コマーシャルペーパーのことで、1年以内の短期の借入のために約束手形を振り出すものです。

この社債・CPの残高は、日本全体では90兆円にも上ります(読売新聞2020/4/28)。

 

企業は金利が安い社債の発行などにより資金を調達しまくったわけです。

そして、逆に自社株の買取を進めたのです。

 

返済する必要のない株式のほうがコスト高とは?

日本企業の自社株買いは2018年度で6兆円を超えています(日経新聞2019/5/22)。

自社株買いとは、自己が発行する株式を株式市場から買い取ることです。
ソフトバンクも、今後自社の株式を最大2兆円買い取ると発表しています(2020年3月23日)。

 

社債は返済しなければならない借金ですが、株式は返済する必要のない資本です。

 
普通の感覚では、返済しなくていい株式(資本)を増やした方が、コスト的にもいいはずです。
しかし優良企業にとっては、そうとも言い切れないのです。

 

なぜなら、株式の場合、株主に対して配当を支払わなければならないからです。
当期純利益と配当金の割合である「配当性向」でみると、多くの企業が30%前後の配当を目標としています。

 

利益の30%が配当に持って行かれる、これは税金や利子と変わりありません。

それなら社債のほうがよっぽど安上がりだ、というわけです。

このため、社債などより相対的にコストが高い株式の自己株買いを推進しました。
自社株買いは市場から株式数が減ることを意味しますから、これによって株価を押し上げる効果もあり、優良企業にとっては一石二鳥です。

 

世界は債務で溢れている


これは日本の企業だけではなく、たとえばアメリカのアップルも同様です。


アップルは、2019年に社債で70億ドル(7,400億円)を調達しました(ブルームバーグ2019/9/5)。
これに先立ち、2018年には1,000億ドル(約11兆円)に上る自社株買いプログラムを発表しています(日経新聞2018/5/2)。

アップル

 

さらに世界を見渡すと
企業の社債だけではなく、個人のローンや政府の国債などもどんどん膨れ上がっています

世界は債務で溢れかえっているんです。

 

20年前に比べて、世界全体の借金は3倍近く増えています。
その額、およそ2京円。
 

単位がもうヤバいです。

コロナウィルスが社会問題化する以前、2019年12月に、経済情報の配信会社ブルームバーグは以下のように報じていました。

世界中の政府や企業、家計の債務残高は過去最大の計250兆ドル(約2京7415兆円)に上っている。これは世界全体の国内総生産(GDP)の約3倍の規模で、地球上の全人口で割ると1人当たりほぼ3万2500ドルに相当する。

世界の債務残高

(ブルームバーグの記事を元に著者作成)

 

企業の売上高が下がり、政府の税収も減ると、どうなるでしょう?
借りまくった借金を返済できなくなる可能性も出てきます。
このため企業は今、最低でも1年、できれば2年分のキャッシュを用意しようと躍起になっています。
さらに借金を増やしているんですね。

でも、もし需要が戻らなかったら・・・
膨れ上がった借金を返済できなくなったら・・・

 
デフォルトに陥ります。

 

デフォルトとは、債務不履行のことで、債務を返済できないことです。

こうなると借金の額が莫大に増えているのが“あだ”となり、リーマンショック以上の、世界大恐慌に匹敵する恐慌が起きかねないという懸念が出てくるわけです。
(世界大恐慌になる理由は複合的で単純ではないでしょうが、ここでは割愛)

世界大恐慌とは、1929年のアメリカの株価大暴落(暗黒の木曜日:Black Thursday)から始まり、1930年代後半まで続いた不況のことです。


このときは27ヶ月間も経済は下降し続けました。
27ヶ月間ですよ・・。

最悪に備える知恵は

もし世界大恐慌並みの不況が来たら、企業倒産が相次ぎ、失業者が街にあふれることになります。そしてハイパーインフレが訪れます。

世界大恐慌時代のアメリカの失業率は25%ぐらいでした。
日本は今、2.5%ぐらいです(2020年3月:総務省統計局)。

今の10倍の失業者が出てきたらどうなるか・・・

そしてインフレが起き、金利も一気に上がる・・・

なんかヤバそうじゃないですか?
私たちの生活はどうなるのでしょう?
そして、それにどう備えればいいのでしょう?

今、家を買おうとしている人は、どう判断します?
固定金利を選択するか、変動金利を選択するか?
そもそもローンまでして家を買う必要があるのか。
そんな固定費を抱えてしまっていいのか?

 

こんな問を自分の頭で考えるためにも、
そしてこんな時代だからこそ
すべての人が経済学を学ぶべきでしょう。

経済学とは、一部の学者や国のためのものではありません。
特にミクロ経済学は、自分の財産をどう管理していくか、という考え方を学ぶための、基礎となります。

これからの不安定な時代に大人として必要最低限必要なリテラシーだともいえます。

このブログでも、個人のための経済学の情報を発信していこうと思います。

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